家に帰って部屋に入った瞬間、脱力して床に座り込んだ。

立つ気力もなく、暫くそうしていると親が帰ってきた。

流石に動かなくてはと、どうにか立ち上がりのろのろとやることを終える。

早めにベッドに横になるが、中々眠れなかった。

頭の中では大空のことばかり。
浮かんでは打ち消して、浮かんでは打ち消しての繰り返し。

何度寝返りを打っても目を閉じてじっとしても寝れず、熱中症対策に机に置いてあるペットポトルから水を飲む。
生温く、いつも飲んでいる水道水なのにあまり美味しいとは感じられない。

その後もどうにか寝なければと一時間ほどウダウダしていたら、いつの間にか眠っていた。

だが、目を覚ますとまだ四時だった。
日が出ていないので空も暗く、窓越しに月が見える。
綺麗な三日月。

「そういえば朝方の三日月は"明けの三日月"っていうんだっけ」

寝ぼけている頭でいつかの授業の雑談に教わったことを思い出す。

三日月は見える時間が短く、朝のものは輝いて見えるから明けの三日月なんだとか。

「綺麗だな……」

俺の心とは裏腹に太陽の光を受けて煌々と輝く。

「俺も、暗闇の中でも迷わず光れたら大空も見てくれたかなぁ」

失恋したとは決まっていないのはわかっている。
それでも男として少しでも意識してもらえない今、心は闇の中に沈んでいるのだ。
輝く気力もなく、太陽のような手助けもない。
ただ埋もれるだけ。

今の俺は大空の光にはなれない。