そんな顔をされたら俺はどんな顔をすればいいのかわからない。

その顔が俺以外の人間を思ってのものかもしれないと思うと、冷静でいられなくもなる。

「無理に言わなくてもいいんだけど」

流石に悪い気がしてきたのと、自分が傷つくのを防ぐため、言わない選択肢もあると示したが無意味なものとなった。

「……いるよ」

驚きで足が止まるのをグッと堪える。
何事もないように言葉を続けた。

「いるんだ。それこそ意外」
「失礼な。私だって恋ぐらいするし、清夏が聞いてきたんでしょ」
「プリンセスにでも憧れたのか」
「そういうこと言うんだ?今回は一度の打撃じゃすまないよ」
「ああ……すみませんでした」

拳を固める大空に勢い良く頭を下げて謝る。

これもお決まり。
今までこういったやり取りができるのは楽しかった。

だが、今回はそう思うほどの余裕がない。

ずっと一緒にいることはできない。
わかっていたけれど、大空に好きな人がいると分かるとそれが現実味を帯びて迫ってくる。

思いが同じでないと一緒にはいられない。
相手の頭を操れるわけでも読むことができるわけでもない。
何に好感を持って、自分がどう思われているのか、言葉にされなければ一生わからない。
そんな中で思いが通じ合うなんてすごく難しい。
だからこそ、奇跡のようだと言われる。
そしてそれを今、実感している。