その時は放課後に来た。

「清夏」

下校中「会いに行ったら変に思われるだろうな」と悶々と考えながら校門を抜けようとした俺の肩を大空が軽く叩く。

「お疲れさま」
「ああ」

運よく大空から声をかけてくれた。

横に並んで帰路につき、聞くなら今じゃないかと覚悟を決める。

「あ、あのさ」

挙動不審にならないように気をつけて大空を見る。

「ん?」
「俺の友達が大空って好きな人とか彼氏いるのかって聞いてきて。俺らあんまりそういう話しないだろ?だから、どうなんだろうと思って」
「え……」
「え?」

目を見開き、仰天したような顔をする。
俺もそんな大空につられて謎の声を出してしまった。

「俺、やばいこと聞いたか?」
「いや、清夏もそういうこと考えるんだなって。人の恋愛事情とか一切興味なさそう」
「俺をなんだと思ってるんだ。……確かに大っぴらに話す奴の話は興味ないけど」

異性の耳にも入るようにかは知らないが、自分の好きな人を色んな人にばらす奴はどうも好かないし、そんな奴の好意が万が一、自分に向けられても対応も考えも変わらない。
大抵そういう奴はコロコロと対象を変えるものだろ。
信用ならない。

「そういえば話さないね、恋愛系の話」
「周りから聞くわけでもないし」
「他の人にも言うこともないからなぁ」

大空は日常的に聞く側にまわることが多い。
質問をして、相槌や感想を言いながら相手が話しやすい環境をつくろうとする。

自分のことを話しやすい環境をつくる力量はあるのに作ろうとしないのだ。

だから、浮ついた話も流れてこない。

「えっと……」

大空は黙り込んだと思ったら徐々に頬を赤らめていった。