「あっつ……」

何回呟いたかわからないそれ。

頭がボーッとして心拍数があがる。

さっきまで一緒にいたのに。

無性に、猛烈に。

瑞季さんに、会いたい。

そう思った俺は、バクバクと音が鳴る心臓を押さえながら、店のキッチンに戻った。





あれ、瑞季さん?

キッチンで手を洗いながらあたりを見回すけれど、彼女の姿が見当たらない。

店長はラストオーダーの少し前に店を出ていて、今は完全にこの店の中にいるのは瑞季さんと俺のふたりだけ。

どこ行ったんだ。

探しに行こうと踵を返した瞬間────。


ガタッ


っ?!

奥の方から、何かが倒れるような鈍い音がした。

「瑞季さん?!」

慌てて、音のした方へと急ぐ。

多分、バックヤードにある倉庫からした音だと思う。

瑞季さんに何かあったのかも、そう考えるともう必死で。

小さな店の中を走った。