「あーーあっつ」

お店を閉めてから片付けに入り。

裏口からゴミ捨てのために外に出れば、生温い空気が肌に触れた。

クーラーの効いた店の中にいたから、余計に蒸し暑さを実感する。

太陽はもうとっくに沈んでいるはずなのに。

夜もこんなに暑苦しいとか、馬鹿じゃないのか。

何に、誰に、腹が立っているのかもよくわからない。

いや、全部にだ。

クッソ暑いのも、珠貴が瑞季さんと仲良くしているのも、瑞季さんが珠貴を好きだと言ったのも、俺に可愛くないと言ったのも、

全部全部。

ゴミ捨て場へゴミ袋を捨てて、夜空を見上げる。

光る月にさえ、バカにされてる気がして。

今までは、ただただ、シフトが被って話せる時間があるだけで嬉しくて。

ずっとこの空間が続けばそれでいいなんて思っていたけれど。

このまま、珠貴と瑞季さんの距離がどんどん縮んで、俺の入る隙が本格的になくなってしまったら?

そう考えると、もう何もかも嫌になりそうで。

俺と瑞季さんの時間を奪った珠貴にむかつくけれど。

それよりも、何一つ自分から動こうとしなかった今までの自分の意気地なし加減に呆れて。

何だかんだ、珠貴がここに入って来てくれたことで、それに気がつけてるわけで。