『いいんですかね、』

『いいんだよ!誰もいないし。ちゃんとみんなの分はあるんだから。これはね、この間のとてつもなく忙しかった日曜日を乗り越えた、私と若葉くんへのご褒美なんだよ、だからほら、』

そう言って渡されたフォークを待って。

一つのモンブランを。

ふたりで頬張って。

いつ店長が帰ってきてしまわないか。

そんな緊張感と。

『ん〜美味しいーー!』

初めて見た、子供っぽい可愛らしい瑞季さんの表情が。

『うん。すげー美味しい……』

『フッ、これで若葉くんも共犯だね』

イタズラな笑顔が。

愛おしく思うには充分すぎて。

それから、一緒に仕事をしていくうちに、瑞季さんの魅力をどんどん知って。

もう完全に虜で。

バイト終わりにロッカーで髪を解く姿も、
お客さんの注文を聞く横顔も。

「お疲れ様」っと笑いかけるところも。

店長に不満があるときの、膨れる頬も。

いつもは仕事のできるテキパキしている年上の女の子なのに。

ふと、どうしようもなく可愛い顔を見せるんだから。

ずるい。