ああああ...来てしまった。
『ヴェグトヴァン魔法学園』黄金(おうごん)(かね)のような物や魔法の杖のオブジェが豪華(ごうか)に飾られた門の右横にそう文字が()られている。
「あ、あのー...休む事は出来ない?」「出来ません。」
ですよね!二学期初日らしい...って事は(すで)にちょっとした嫌がらせをしてしまってる説が...どうしようどうしよう...
小説を見てる時はアリーに腹が立って「早く成敗ー!」なんてよくよく言ったものだが、やめてくださいほんと成敗しないで!しかもそれがレティだと言うのだから尚更(なおさら)だ...
推しに成敗されるとか嫌!____
そう、私はレティのガチファンであるのだ。グッズは全部買ってるし期間限定イベントも凄い参加した。それほど推してるからこそキツイよ...
「ねえ...やっぱり...」「いけません。」
ですよね。

「ああ...どうしよう...」
結局(けっきょく)来てしまったけど勇気が無くて教室前で止まって居る最中である。
「何してるの?」「うわぁ!?ごごめんなさい!」
クラスメイトに(おどろ)き過ぎて変な声出たわ最悪だっ!
とにかくこれからは目立っては行けない!死にたくない!レティにもブロンスにも関わらないようにしよう!そう決意して...
「ねえ、君上級生?」「うひぃゃあああ!?」
優しく低すぎない何処(どこ)か気だるげなゆったりとした声が耳元に(ささや)かれたような錯覚(さっかく)にまーたしても変な悲鳴。もう私には合わない...
「へっ...?」「ねえ、君上級生?まあ中級生でも下級生でもいいんだけど、魔科学実験準備室(まかがくじっけんじゅんびしつ)って何処かなぁ?俺方向音痴(ほうこうおんち)でさ?分かるなら教えて欲しいなぁー」「ロ、ローマウス...レティ...先輩...」
()らめく長い三つ編みの銀髪、空のように()んだシアン色の(ひとみ)、スラリとした体型に女性が羨むほどの美貌、細いのに高い身長、白いまつ毛、花のような(やわ)らかな笑顔。そんな原作内で作者が世界一の美男子と言う異次元レベルの(うるわ)しいイケメンが上目遣(うわめづか)いで私に頼み事をしに来ていた。