わたしと貴史の関係に名前はつけられない。

 貴史は、いつもそばにいてくれる。これからも、それは変わらないだろう。わたしは、いつまで貴史を求めるのだろうか。

 この先何年もいまの関係が続くとは思えない。いずれ、それぞれの好きな相手と結ばれるはずだ。

 わたしは、いま、立川先輩のことが気になっている。

 初めてだった。わたしのことを、好きなんて言ってくれる男の人は。

 告白された日。


「どうしても、美咲ちゃんと、付き合いたいんだ」


 先輩はわたしの目を真っ直ぐに見てそう言ってくれた。

 まだ、よく知らない相手に対して、どうしてそこまで言い切れるのか、不思議だった。ただ、先輩の真っ直ぐな目には、嘘はまじってないように感じた。


「どうして、わたしなんですか? まだ知り合ったばかりなのに……」


「そんなに理由が必要? 知り合ったばかりかどうかは関係ない。付き合いながら、お互いのことを知っていけばいいんだよ」


 先輩はそうとも言ってくれた。

 他人と付き合うということは、そういうことなのだろうか。

 貴史のことは気になっていたが、わたしは立川先輩と付き合うことにした。

 本当は、貴史の気持ちを、試したかっただけなのかもしれない。