あの日、わたしは多田野君に助けてもらった後、彼に自宅まで送ってもらった。

 彼はたくさんの嬉しい言葉をわたしにかけてくれた。

 だけど、そのほとんどはわたしの耳を通り過ぎていくだけだった。

 自宅に着いて、わたしは彼にお礼を言った。

 多田野君は最後まで心配そうな顔で、わたしを見ていた。

 今日の夜、わたしから沙希ちゃんに電話しようと思った。沙希ちゃんに謝ろう。

 多田野君は沙希ちゃんの彼だ。

 そう。

 わたしにとってはそれ以上でも以下でもない。

 去っていく、多田野君の背中に向けて、わたしは言った。

 さよなら、多田野君。

 今まで、ありがとう。

 わたしは、今日、この恋にさよならを告げた。