あれから、季節が一周した。

 今、わたしの隣に多田野君はいない。

 また、この季節がやってきた。

 桜の花びらは春の柔らかな風に乗って、気持ちよさそうに舞っている。

 今でも彼のことを想うと胸に小さな痛みを覚える。

 だけど、きっとあれでよかったのだ。

 わたしは後悔していない。