いろいろなことがあった一日だった。

 こんなに慌ただしい日は生まれてきて初めてのような気がする。大げさだろうか。

 ベッドのなかでまどろみながら、わたしは今日の出来事を思い返していた。

 親にも学校にも、多田野君にもすごく迷惑をかけてしまった。わたしがふがいないばかりに。

 スマートフォンが鳴ったのは、意識が眠りの世界の淵まできたときだった。

 いつもなら就寝前は、音も振動もならないように設定している。

 わたしはそのまま眠ろうとも思ったけれど、こんな時間に連絡してきたのが誰だか気になった。

 心も体も疲れ切っていたけれど、どうにか起き上がり、机の上に置いてあるスマートフォンを手に取った。

 メッセージが一通届いていた。


『裏切り者。あんなにかわいがってあげたのに』


 スマートフォンの画面には、たしかにその文章が浮かび上がっている。

 わたしは沙希ちゃんの本性を目の当たりにして血の気が引いた。

 わたしは返信せずにベッドに戻った。

 その日、一睡もできないまま朝を迎えた。一睡もできないのは生まれて初めてのことだった。

 放課後、多田野君の姿は、どこにも見当たらなかった。