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 誠さんの顔を覗き込むと、気持ちよさそうにすやすやと眠っている。とはいえ、私だってこんなにスッキリした朝は久しぶりだった。

 昨日出会ったばかりだし、愛があるわけじゃない。でもお互いに溜め込んでいた欲望は相当なものだった。はっきり言って大満足だったし、彼くらいのしつこさが私にはちょうどいいって実感した。

 布団から出ようか悩んでいるど、彼の腕が伸びてきて抱きしめられてしまう。こんなふうに男の人の腕に抱かれて目覚めるなんて初めてだから、少しドキドキした。だってこういうシチュエーション、すごく憧れていた。

「おはよう」

 声をかけると、誠さんはゆっくりと目を覚ます。同じベッドに私がいると知ったら驚くだろうなーーそう思っていたのに、誠さんはにっこり微笑むと、私の体をギュッと抱きしめたのだ。

「おはよう、茜さん。昨日はしつこくしちゃってごめんなさい」

 おぉ、元カノじゃなくて私だってちゃんとわかってた.それだけですごく嬉しい気持ちになる。

「全然。というか、私の方が先に寝落ちしたよね? なんか夢中になりすぎてて、結構したのかな?」
「……いっぱいしました。ゴミ箱を見ていただければわかるかと……」

 少しドキドキしながらゴミ箱を覗けば、使用済みのゴムがそれはたくさん捨てられていた。こんなにしたの⁈ 元カレなんか、一回で限界だった。しかしそれにしては、体の痛みは感じなかった。

「どうやら私たち、体の相性はばっちりみたい」
「体も、だといいな。俺は茜さんとのお喋りも楽しかったから」
「……本当?」

 恥ずかしくて俯きがちに尋ねたけど、視線が絡み合った瞬間、どちらからともなくキスをした。それが自然と出来たことに驚いた。

 とはいえ、これは一夜だけの関係。でも……一夜だけではもったいない気がするくらい、ピタリと重なり合う何かを感じていたのも事実だった。

 でも彼はそう思っていないかもーーそう思った時、彼が口を開いた。

「今日は日曜日だけど、何か予定とか入ってる?」
「ううん、溜まった洗濯物と買い物と、見たかったドラマを見るくらい」

 昨日と同じセリフが口から出たものだから、二人して吹き出してしまう。

「まぁいつでも出来ることだけどね」
「それならもう少し一緒にいない?」

 ドキッとした。期待し始める自分がいる。