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 飲み屋に着くと、とりあえずビールを頼み、この偶然の出会いを乾杯をする。

「まさか同じような境遇の人と出会って、しかも助け合っちゃうなんて思いもしなかった」

 お酒も入ったし、急に敬語をやめたから、誠さんはちょっと驚いたようだった。でも同い年だし、どうせ今日だけの関係。友だちに話すみたいに愚痴りたいじゃない。

 でも誠さんは嫌な顔をするどころか、楽しそうに笑い出した。

「本当だね。俺もちょっとびっくりしてる。どうせフラれるし、今日はヤケ酒だ! って思ってたから」
「じゃあヤケ酒仲間が出来たわけだ。お互い最悪だけど、まぁちょっとはラッキーも残っていたのかな」

 それから私たちは仕事のこと、趣味のこと、休みの日の過ごし方などを話した。職場は意外と近くて驚いたし、二人とも音楽が好きだという共通点も見つけた。休みの日は元カレに会いたくて家に行くのに相手にされない私に対し、誠さんは元カノさんの予定次第だったらしい。だからいつも連絡がつくようにしていたと口にした彼の笑顔は、本当に優しい人なんだって伝わってきた。

「予定空けて待っていてくれるなんて……誠さん、良い人すぎでしよ。私なんかずっと放っておかれてたんだから」
「そうでもしないとフラれちゃうかなぁと思って」
「……好きだったんだね、彼女のこと。なんか羨ましい」
「でも長く付き合ったのなら、そういう時期もあったんじゃないの?」

 きっと大した意味もなく聞いてるんだろうな。普通ならこんなこと話したりしないけど、なんだか全て吐き出してしまいたい気持ちになる。

「誠さんって、どれくらいの頻度でエッチする?」
「えっ⁈ エッチ⁈」

 まぁいきなり話せばこんな反応だよね。言葉選びを失敗したかしら……まぁどうせ数時間後にはさよならだし。思わずため息をついた。

「さっきの彼ね、いつもゲームばかりやってるの。だから誘うのは私ばっかりで、キリのいい時を狙って始まるんだけど、ため息混じりに仕方なくって感じなの。愛情なんて全く感じない。ピロートークもなし、キスしたあとはうがいまでするのよ。まるで私がバイ菌みたいじゃない。私は余韻に浸りたいのに、すごい温度差を感じない?」

 思い出したくない記憶。でも誰かに聞いて欲しくてしかたなかった。だけど気付けば彼ばかりを大切にして、その間に友達も仕事やプライベートが忙しくなって、話せる距離感をなくしてしまったのだ。