反射的に返事をすると、塊はほっとしたように肩を落としてあたしに向き直ろうとした。勢いで「はい」なんて言ってしまったあたしはたちまちあわてて
「いや、うそ! うそです! 着てないです!」
「はっ?!」
 動揺を露にする塊に、ごめんなさいごめんなさい! と謝りながら床に落ちていたTシャツワンピもぎ取り、頭からスポンと被る。するとなにか固いものが膝に落ちた。
 手のひらにおさまるほどの真っ赤な長方形。一センチほどの厚みがある。床にも大量に散らばっているこれは、いったいなんだろう。
「小湊さん。おれ、帰っていいかな」
 塊が訊く。
「えっ、あ、はい」
「で、服は?」
「あ、き、着ました」
 まっしろな塊は今度こそあたしに向き直った。
 切れ長の目に、気だるそうな口元。沈黙をまぎらわせるように右手でわしわし髪をかきあげる。Tシャツも肌も髪も、完ぺきにまっしろだ。
「それで、つぎはいつ?」
 ぷいと目をそらし、男が訊いた。
「つぎ?」
「来週はバイト後ならだいたい都合つくけど」
「はあ……」
 なんのことかわからず、あたしは曖昧に相槌を打つ。塊はまたここに来るんだろうか。なにをしに? ――そんなのひとつに決まってる。パンいちだったのは、そういうことだ。