フローラ姫は元気よくカトリーヌの肩を叩いた。
「そうですね」
カトリーヌは大きく頷きながらも、なぜか涙が止まらなかった。
 それからしばらくして、カトリーヌは正式に国の専属魔法使いになった。フローラ姫は一緒に城に住もうと言ってくれたが、薬草を摘むにも、本を読むにも魔女の塔に住んでいる方が都合がよかったので、城へは通いで出向くことになった。またフローラ姫と同じくこの国の姫であることは依然伏せられていた。もちろん、王とフローラ姫は公表しようとしていたが、それもカトリーヌ自身が断っていた。
「本当に城に住まなくてよいのか、それに姫の身分の方がいいような気がするが」
 タムにもそう訊かれたが、カトリーヌは答えた。
「今まで通りでいいんです。いえ、今まで通りでもないですが」
 ますます魔女の塔の図書室に入り浸るようになったカトリーヌは、本をたくさん抱えていると、ガリヤが図書室に飛んできた。
「フローラ姫が下に来てるぜ、カトリーヌ」
「分かった、ありがとう、ガリヤ。今行きます」
「今日も遊びに来たのか、フローラ姫は」
「デリザスの料理が美味しいから食べにきてるんです」
「城の料理もうまいと思うがね」
「肩を張らずに食事ができるから、こっちの方が好きみたいです」
「ふむ、なるほどな」
 タムは納得したように頷いた。
「それでは、下に行ってきます」
「うむ、フローラ姫によろしくな」
「はい!」
 カトリーヌは笑顔で答えた。(完)