「あら、そうなの。で、そのデリザスとかいう猫は何をするの」
「パーリヤさんの料理を作ったりします。あと縫い物とかいろいろです」
「まあ、猫なのに、器用なのね。猫の手で料理なんて作れるのかしら」
 びっくりした表情のエリザベスに、カトリーヌは神妙な面持ちで説明した。
「少しばかり魔法を使って料理するんです」
「猫なのに、魔法が使えるのね。便利ね。城にもそんな猫がいればいいのに!」
「カトリーヌはどうなの? 魔法は使えるの?」
「いえ、私はそんな使えません。なくした物を探したり、自分の姿をくらます魔法ぐらいは、本で覚えましたが、もともとパーリヤさんは私に魔法を教えたりはしません。側でパーリヤさんが使う魔法を見て、こっそり覚えましたが……。でも教えてもらったわけではありません」
 自信なげに言うカトリーヌに、エリザベスは目をきらきらさせてこう言った。
「すごいじゃない! 教えてもらってもいないのに、魔法が少しでも使えるなんて。それってある意味才能じゃない」
「そうでしょうか……。でも使えるのは大した魔法じゃないです。子供だましみたいな魔法ばかりです」
 人に褒められたことのないカトリーヌは恥ずかしそうに顔を赤らめた。エリザベスは首を大きく横に振ると、
「そんなこと言ったって、私は今まで魔法を使えた試しが一度もないわ。城にも魔法を教わる時間があるのよ。なのに、私は失敗ばかりで一度も成功させたことがないわ。きっとあなたには才能があるのよ」
 そう言うと、エリザベスは優雅にカトリーヌの手を取り、こう続けた。
「とりあえず、その偉大な才能の火を消さないためにも、ごちそうを探しに行きましょう」
 エリザベスからそんな話を聞いて、少しだけ心が軽くなった。自分にも何かできることがあるかもしれない、少なくとも、この目の前にいる少女の手伝いぐらいは、できるかもしれないと、カトリーヌは思った。