カトリーヌがパーリヤの前まで来ると、パーリヤは勝ったとばかりに笑った。
「馬鹿な奴だ。死ぬのはおまえだ、カトリーヌ!」
 カトリーヌの手から杖をもぎとると、パーリヤは高らかに宣言した。その時、カトリーヌは左手に隠し持っていた丸薬のようなものを、パーリヤめがけて投げつけた。
「パンッ」
 その丸薬が弾け飛び、パーリヤの体全体に濃い紫色の粉が一面にまとわりついた。
「こっ、これは?!」
 パーリヤは必死になってその粉から逃げようとしたが、粉は容易には離れようとしなかった。
「あなたが作っていた毒薬です。その毒薬に魔法をかけて、あなたから離れないようにしました。あなたの負けです! 解毒剤を作らないと、あなたは死にますよ」
 それを聞いたパーリヤは急いでその場を離れようとしたが、タムが言った。
「戒めの魔法がすぐに効いてくる。魔女の塔に寄っている時間もないくらいになっ」
「おのれ……」
 パーリヤが呻くのと同時に、彼女の姿は目に見えて薄くなり、消えていった。それと同時に森のあった風景はすぐさま消え去り、一瞬にして元いた広間に三人は戻っていた。
「どこへ行ってたんだ、三人とも! 急に姿が見えなくなったと思ったら、また現れて」
 王が心配のあまり青ざめながら、彼らの元へと駆け寄った。
「私達は大丈夫です、王よ」
 広間の床に崩れ落ちたフローラ姫だったが、すぐにしゃんとすると王に答えた。
「皆、無事ならよいが」
 おろおろした様子の王とウルバヌス大臣だったが、そういえばといった顔をした。
「ところでパーリヤはどこへ行ったんだ?」
 それを聞いたフローラ姫は大きなため息を一つつくと、こう伝えた。
「魔法勝負、カトリーヌが勝ちました。だからパーリヤは国から追放しました」
「ななっ、なんと、それはほんとかっ?!」
 動揺の隠せない王に、カトリーヌが言葉少なに尋ねた。
「王様、私は悪いことをしてしまったのでしょうか」
 複雑な表情のカトリーヌを前に、王は首を大きく振った。そうしてカトリーヌを抱きしめた。
「何を言ってるんだ。済まなかった……。今まで本当に済まなかった。おまえは死んでしまったと思っていたんだ。それなのにパーリヤの奴が……。おまえは何一つ悪いことなどしていない」
「そうよ。カトリーヌは何も悪いことなんて、してないわっ! さあ、これからは家族三人で仲良くやっていきましょう」