パーリヤの呪いが消え、体が動けるようになったカトリーヌは銀の杖を頭上へ掲げ、呪文を呟いた。すると空中から鋭い風の音が巻き起こり、パーリヤにむかって突進した。とたんにパーリヤの頬に一筋の赤い傷が走った。
「かまいたちかい、ならば」
 パーリヤも呪文を唱えると、突然無数の剣が宙に現れ、一斉にカトリーヌめがけて、刃が刺さっていった。慌ててカトリーヌは大きな盾を召喚し、剣から身を防いだ。
「グサッ、グサッ、グサッ」
 広間の壁にはたくさんの剣が刺さっていく。それと同時に一本だけカトリーヌのワンピースに突き刺さった。それを見たフローラ姫は、気が気でなかった。しかし幸いワンピースの裾が裂けただけで、大事には至らなかった。ほっとしたのもつかの間、パーリヤの攻撃が続く。彼女は大きな火の玉を空中に作りあげ、それをカトリーヌに向かって投げつけてきた。それに対して、カトリーヌは水の壁を作って応戦した。それが終わると今度はたくさんの黒雲を呼び寄せ、カトリーヌに稲光が当たるように仕向けた。
「ゴロゴロッ、ゴロゴロッ、ドーンッ!」
 つんざくような雷の落ちる音が、広間いっぱいに響き渡り、カトリーヌは稲光の合間を縫って、大きな風を呼び寄せ、雷の元である黒い雲を吹き飛ばした。吹き飛ばした後には、小鳥達も召喚し、のどかな外の風景も幻として見せた。
「生意気なっ、戦いにそんなものはいらんっ!」
 牧歌的な風景まで出してきたカトリーヌに、面白くなさそうに唸った。
「これなら、どうだ。おまえの好きな召喚魔法だ」
 召喚魔法で出してきたのは五メートルはあるかと思える背丈のトロールだった。トロールは大きいだけでなく、腕っぷしも強く、カトリーヌめがけて大きなこん棒をふるってきた。
「ドンドガッ、ドンドガッ」
 広間の壁はあっというまに壊れ、振り回されたこん棒は、カトリーヌの足を直撃した。
「いたっ!」
 彼女が悲鳴をあげるのと同時に、更にこん棒がカトリーヌの体に振りかざされようとしたその時、フローラ姫が悲鳴をあげた。もう駄目かと思った瞬間、カトリーヌは銀の杖をとっさに掲げた。と、ものすごい閃光が広間に広がった。誰もが何が起きたか分からなかったが、気がつくと巨大なトロールが黒焦げになっていた。銀の杖の力が放出され、大爆発が起こったのだった。