「そうさ! 私がカトリーヌをさらい、王妃を毒殺した。私は王妃が邪魔だった。王妃は魔法の才能に恵まれていたからな。いつ、私がお払い箱になるか知れたものではない。おまけにカトリーヌだ。水晶玉は嘘をつかないからな。カトリーヌがいると私の地位が危うくなると、そう語っていたよ。まさに今、そんな状態じゃないかっ! 子供だの大嫌いな私がカトリーヌの世話を焼いてやったのに、このざまはなんだ。おまえは、おとなしく魔女の塔にいればよかったものを。なぜのこのこ城まで来たんだ」
 一瞬広間の中がしんとした。カトリーヌは、青ざめた表情になり、唇が震えた。本当にやっぱりそうだったんだと思うと同時に悲しさが胸の中いっぱいに広がった。
「もしそれが本当だったとしても、私はこの粉を使わずにあなたから本当のことが聞きたかったです、パーリヤさん」
 なぜか、カトリーヌの目からは涙がこぼれ落ちた。
「ふんっ! 泣いたところで何も変わらんわ、カトリーヌ。おまえはこの国では用済みなんだ。今更、姫が二人いたなんて言えぬだろうさ」
 悪魔のようにパーリヤは笑うと、カトリーヌが、きっとなって言った。
「フローラ姫、さっきの話、私はお受けします!」
「さっきの話って」
 固唾を呑んで事態を見守っていたフローラ姫が、少し疑問の表情を浮かべいてたが、すぐに合点がいってこう答えた。
「国の専属魔法使いになるってことね!」
「それです!」
「何を言ってるんだ、カトリーヌ。おまえごときに国の魔法使いなんぞ無理に決まっている。魔法のまの字も知らぬおまえが」
 パーリヤはあざ笑ってそう言った。
「魔法だったら、今までいろんな書物を読んで、ずいぶん覚えました。後は実践あるのみです」
「カトリーヌ、おまえが私の娘であることはよく分かったぞ。何しろ、おまえはフローラ姫そっくり、いや、おまえの母にそっくりだ。しかし国の専属魔法使いになることは、少し考えた方がよいのでは。わしも、おまえの力量は知らぬのでな」
「はははっ! ほら見ろ。王だってそう言うだろ。さあもう茶番は終わりだ。おまえは邪魔でしかない」
 消えろと言わんばかりのパーリヤに、カトリーヌは迷わず言った。
「それでしたら、魔法で私と戦ってください」
 その言葉を聞いたフローラ姫とタムは唖然とした。そんなことを彼女が言い出すとは思わなかったのだ。