「聞いてるですって? 私の本当の気持ちは聞いてないじゃない。いつもいつも、パーリヤの意見ばかりで」
 強い調子で言い出したフローラ姫に王は黙った。
「でもそれも今日で終わりです。私達はパーリヤの悪事を暴いたのです」
「ふん、私の悪事とはいったい何を言い出すんですか、フローラ姫」
 パーリヤは睨みをきかせながら、尋ねてきた。
「王よ。あなたには私の他にも娘がいたことを知ってますよね」
「いっ、いったい何を言ってるんだ、そなたは」
 びっくりした様子で王は訊き返した。
「私の双子の妹カトリーヌです。カトリーヌはパーリヤに連れ去られたのです」
 さすがに王も表情を変えると、パーリヤを見つめた。
「どういうことだ、パーリヤ」
 パーリヤも一瞬気まずそうな顔をしたが、いつも通りの大きな声で一蹴した。
「何を訳の分からないことを言ってるんだい、フローラ姫」
 フローラ姫はかまわず、そのまま言葉を続けた。
「パーリヤは水晶玉で見たのです。双子のうち、魔法の才に恵まれた子によって、自分の立場が危うくなることを。それを知ったパーリヤはカトリーヌをさらい、魔女の塔に住まわせた」
「何っ、魔女の塔にカトリーヌが?!」
「それだけじゃないんですのよ、王よ。パーリヤは私の母であるマリア王妃に毒を盛り、殺したのです」
「ななっ、なんと……」
 王は絶句して、唸った。
「たわけが、なぜそんなことが分かるというのだ。どうせでたらめだ。いったいどこからその情報を仕入れてきた」
 パーリヤは息まいて、反論してきた。フローラ姫はすぐさま答えた。
「魔女の塔で、マリア王妃の幽霊とお会いしました。彼女は幽霊になり、全てを知ったのです」
「幽霊だと……」
 困惑した様子で王はフローラ姫を見つめた。
「ええ、間違いなく母でした。母は死んでまでも、パーリヤのせいで魔女の塔に閉じ込められていたのです」
 パーリヤはふてぶてしい表情を浮かべると、ふんぞり返った。
「ふん、何かと思えば幽霊とはね。そんな訳ないだろうが。そんなこと誰も信じないさ」
「証拠はここにあります」
「証拠、証拠とな……」
 王は戸惑ったようにフローラ姫をじっと見た。
「このピアノです」
「このピアノの何がいったい……。こっ、これはっ!」
 突然王は叫んで、顔を手で覆った。