とたんにそんな言葉を言われて、カトリーヌは青ざめた。
「そうよ。パーリヤのやったことを王に伝えるのよ。パーリヤを追放するの!」
「追放?!」
 ますます困惑した表情を浮かべるカトリーヌの手を取ると、フローラ姫はこう語った。
「そしてあなたを国の専属魔法使いにするのよ!」
「なっ、何を言ってるんですか! 私はまだまだ見習いの魔法使いです。その私が国の専属魔法使いだなんて、とんでもない」
「魔法の力も大事だけど、国の専属魔法使いで、一番大事なことは、信頼できる人物かどうかが一番なのよ。私はあなたを信頼しているわ」
 カトリーヌの手をぎゅっと握ると、安心させるようにフローラ姫はそう言った。
「でも……。王はなんと言うでしょうか」
「あなたはなんと言っても王の実の子なんだから、信頼できるに間違いないじゃない」
「でも私はまだ話したこともないんですよ」
 表情を曇らせながら、カトリーヌは自信なさげにぼやいた。
「じゃあ、話せばいいのよ! これからいっぱいいっぱい話しましょう」
 フローラ姫は満面の笑みを浮かべて、きっぱりと言い切った。
「はい、この話はこれで終わり。そろそろ敵が来たわよ!」
 割り切れない気持ちのカトリーヌだったが、その彼女の目にも、エミリーが先導して、王とパーリヤのやってくる姿が見えた。
「トラヤヌス王子がとっとと帰るなんて、おまえら何をやらかしたんだいっ! このならず者達め」
 パーリヤは王を差し置き、ツカツカと歩いてくると、胸倉をつかみそうな勢いで、カトリーヌの前までやってきた。
「何を言ってるの?! トラヤヌス王子は彼女のおかげで円満にお帰りになられたわ」
 フローラ姫は、カトリーヌをかばい、二人の間に割って入った。
「確かに大臣はそのようなことを言っておったが、本当にそうなのか?」
 王は不安げな目で、パーリヤとフローラ姫を見比べた。
「王よ、本当にその通りです。娘の私が言っているのだから、間違いないです。嘘をついてどうするんですか」
「それは、そうだが、パーリヤが……」
 自信ない言葉で後を続けようとする王に対して、フローラ姫は急に叫び声をあげた。
「ああっ! ああっ! パーリヤ、パーリヤ! いつも王はパーリヤばかりで、私の言葉など耳を貸そうともしない」
「何を言う。そなたの言うことも聞いてるではないか」