「そりゃそうよ。パーリヤはお抱え魔法使いで、あなたはその弟子なんでしょ。弟子だって城に仕えているのだから、城からの食糧をちょうだいしてもおかしくないわけよ。パーリヤだけお腹いっぱい食べてるなんて不公平よ」
 彼女が明るく抗議してくると、なぜか本当にそれが正しく思えて、返す言葉がなかった。なんだか太陽みたいな子で、憎めない。彼女の口調を聞いていると、眼前に何かが花開いたように、今までの迷いが、すっと消えたように思えた。この子は不思議な子だ。カトリーヌは、不安げな表情を少し和らげると、彼女に告げた。
「分かりました。あなたに協力します」
「協力するって、さっきから協力してくれてるじゃない。でもまあ、いいわ。心の底からそう思ってくれた方が安心だわ」
 エリザベスは得意満面の笑みを浮かべた。
「それなら早いところ、魔女の塔へ行きましょう」
「あ、でも待ってください。パーリヤさんから仕事をいくつか言いつかっているんです。かぎ草と綿の実、それから豚のしっぽ草を集めてくるようにと。それとほれ薬の調合と、あと台所の掃除も! 魔女の塔を探検している時間なんてないです」
大慌ててといった調子で、カトリーヌが言うと、エリザベスは腕を組みながら、困ったような素振りを見せた。
「あら、それは大変ね。大仕事って感じね……。でもお腹ぺこぺこで仕事なんてできないわよ。先に魔女の塔に行って、ちゃんとした朝食をもらってこなくちゃ。それから思ったんだけれど、草取りぐらいなら、私でもできるわ。二人でやれば早いでしょ。そしたら食糧を見つけるぐらいの時間はできるでしょうよ」
「そうですね……。とりあえず草取りを手伝ってくだされば、なんとかなりそうです」
 カトリーヌが心もとない調子で言ったのに対して、エリザベスは自信満々ぱちんと指を鳴らした。
「問題解決ってことね。じゃあ、さっそく魔女の塔へ行きましょう!」
 彼女はさっそうと小屋のドアを開けると、おずおずとしているカトリーヌを後ろから押し出した。
「さあ、行くわよ」
 彼女の号令とともに、二人の少女は小屋から数歩先の魔女の塔へと向かった。