カトリーヌは小屋に戻ると、またひどく驚いた。エリザベスが、きれいなドレスを脱ぎ捨て、自分のみすぼらしい灰色のワンピースに着替えていたのだ。その姿は、まさに自分そのものだった。目の前に鏡があるのではと思うぐらい、カトリーヌとエリザベスは背格好まで一緒だった。服のサイズまで同じだったのか、エリザベスは、少しも窮屈そうな様子ではなかった。こんなにそっくりだったら、パーリヤも気づかないに違いない。一方でエリザベスは苦戦していた。背中まである長い髪を、カトリーヌのようにおさげに結ぶことができなくて、四苦八苦していたのだ。
「もう! 嫌になっちゃう。髪はいつも侍女がやってくれるから、うまくいかないわね」
 様子を見ていたカトリーヌは、彼女の艶やかな髪に、手を伸ばし、あっというまにおさげをこさえてやった。
「あら、ありがとう……。さて、どうかしら。私はあなたに見えて」
 エリザベスは、面白そうな表情を浮かべながら、カトリーヌの前で、くるりと回って見せた。灰色のワンピースは、どう見ても、質素なものだったが、彼女が着ると、優美な服のように見えた。しかし、顔を見ると、自分がそこにいるような気がした。
「ええ、どう見ても私のようにしか見えないです」
 エリザベスは堂々とした様子でこう言った。
「よかった! それなら私も魔女の塔に入っても怪しまれないわね」
「まっ、魔女の塔に入るんですか?」
 思いも寄らない言葉に、カトリーヌはびっくりした。
「そりゃ、そうよ。あなたの持ってきたそのパン、朝食と夕食分なんでしょ。パン一個だけなんて、足りないわよ。魔女の塔にはきっとお腹を満たす料理が山ほどあるわよ」
 嬉しそうに言うエリザベスを、眉をひそめながらカトリーヌは諭した。
「それは泥棒じゃないですか」
「大丈夫よ」
「何が大丈夫なんですか」
 疑心暗鬼になりながら、じっとエリザベスを見つめると、彼女は言った。
「こう見えて私は城に仕えている者なのよ。パーリヤだって城に仕えている者でしょ」
「それはそうですが……」
「そもそもパーリヤの食材だって、城から来ているでしょ。私がごちそうになっても文句はないわよ。それからもちろん、あなたもよ」
「私もですか?」
 いきなり自分もと言われて、カトリーヌは驚いて彼女を見た。