「それについては、歩きながらしゃべります。ともかくここを出ましょう」
 こうして三人は男を教会の廃墟へと残し、本来の城へと続く道を急いだ。気がつけば、夜はずいぶんと更け、真上にあった月も徐々に下へと傾き始めていた。三人は森の中へと戻ると、兵士達の行った道を歩き始めた。
「それでどうやってこの剣を手に入れたの。まさか本当に盗んだんじゃないでしょうね」
 少し非難めいた口調で、フローラ姫は怪訝そうにカトリーヌを見やった。
「盗んだわけではないんです。ただ一時お借りしただけです。使用後は戻すつもりでした」
「借りるってどうやって?」
 びっくりした表情のフローラ姫にカトリーヌは小さな声で言った。
「魔法です。魔法で剣を取り出したんです」
「魔法で?!」
 更に唖然とした表情で、フローラ姫は叫んだ。
「そうです」
 カトリーヌは大きく頷くと説明した。
「魔法で取り出す場合、自分のいる場所から近い場所の剣だったりしますが、何より問題となってくるのは、私に協力してくれる剣であるかどうかです。剣というより、その持ち主自体ですが……」
「へえ、そうなのね……。読めたわ。あなたがなぜ王家の剣を取り出すことができたのか。それはやっぱりあなたが私と血のつながった姉妹だったからだわ。つまりは王家の血筋だったから。だから剣があなたを守ろうとしたのだわ」
 納得したとばかりに、フローラ姫が頷くと、カトリーヌは呟いた。
「やはり本当なのですね。私が王家の出であるというのは……」
まだまだ半信半疑なカトリーヌは、目の前にその真実を改めて打ちつけられたような気がした。
「それにしても、せっかく剣があってもあんな剣の使い方じゃあ、意味がないわね」
「す、すみません」
 カトリーヌが小さくなって言うと、フローラ姫は頭を振った。
「でも必死になって戦ってくれたのはわかったわ。助けに来てくれてありがとう。本当に助かったわ。私ひとりじゃあ、どうにもならなかったもん!」
 そう言われてカトリーヌは、ほっとしたのと同時に心が温まるのを感じた。
『よかった、よかった! 本当によかった。あの時助けに行く勇気を出して本当によかった』
カトリーヌは自分で決めて行ったことが、こんなにもいい形になったのが嬉しかった。
「ところで、二人ともなぜ私を追ってきたの?」
 フローラ姫にそう訊かれ、カトリーヌは、とたんに思い出した。