フローラ姫は相手の剣を受け止め、刀身をねじ伏せた。思わず男はよろめいたが、すぐに反撃した。彼は持てる力全てを剣に込め、フローラ姫の隙を突こうと、右に左に剣を振りかざした。一方フローラ姫は、まるで踊っているかのように滑らかに動き、男の剣をなんなくかわしていった。男も負けてなるものかと、必死に食らいついていき、フローラ姫のスタナミが切れるのを待った。しかしフローラ姫はそう簡単にはくたばらなかったので、逆に男の息があがっていき、へとへとになっていった。そうして、男がどうにもこうにも、腕があがらなくなった頃に、フローラ姫は、男の剣を強く払いのけた。彼の剣は男の手から離れ宙を舞ったかと思うと、床に叩きつけられた。男が剣を取り戻そうとしないように、カトリーヌはとっさにその剣を拾い、握りしめた。それと同時にタムが丸腰になった男に飛びかかり、彼は一瞬にして床に倒れ込み、タムに喉元を押さえつけられた。
 フローラ姫は男に剣を向けたまま、こう言った。
「女子供だと思って油断するからいけないのよ!」
 それから三人は、男をフローラ姫の時と同じように体を紐で縛りつけ、口を布で塞いだ。
「ふうっ、これでようやく一段落ね」
 さすがにくたびれた様子のフローラ姫が呟いた。
「それにしても、フローラ姫。そんなに剣が立つのになぜ捕まったんだ」
 腑に落ちなそうにタムが訊くと、フローラ姫は言い訳し出した。
「今は男が一人だけだけど、大の男が、五、六人いたのよ。最初はそりゃあもう、親切だったのよ。私が道に迷った話をしたら、城まで連れて行ってくれるって話だったのよ。だから私もおとなしくついて行ったのよ。けど途中で道的に変だと思ったの。かといって武器もないし、男が五、六人じゃあどうにもならなくて、捕まっちゃったのよ!」
「なるほど。それなら早いところ、ここから抜け出して方がいいな。その五、六人が戻って来たら、歯が立たないというなら」
 タムは抜け目ない口調で、二人にそう言った。
「それはそうね。早く出た方がいいわね」
 フローラ姫も相槌を打つと金色の剣を改めて手に取った。
「あの、その剣、家宝と言っていましたが……」
 おずおずとカトリーヌが口を開くと、フローラ姫は少し不思議そうな表情を浮かべた。
「これは間違いなく王家に伝わっている秘宝の剣よ。それがどうしてここにあるのかよくわからないけれど……」