それから二人は低姿勢のまま、礼拝堂の中へと入り込んだ。ベンチのような横に長い椅子が三列ほどあり、その合間を二人は息をひそめて、小走りで横切った。石でできた床は、カトリーヌの木靴が当たり、たまにコツリと音を立てた。その度に、カトリーヌの顔は青ざめたが、ともかくこれ以上、相手に気づかれないよう歩を進めた。二人は前進して行くと、礼拝堂の突き当りまでたどり着いた。そこから左側に更に暗い廊下が続いていた。
「いいか、この廊下を渡った一番奥の部屋だ。俺がフローラ姫の紐を噛み切るから、その間敵の目を引きつけておいてくれ」
かがんだカトリーヌの耳元で、タムが小声でそう言うと、カトリーヌは手に持った剣を握りしめた。
「なるべくそうなるようにします」
「それでは行くぞ」
タムは一言言うと、風のように走り出した。二人はざっと走り、廊下を渡ると、一番奥の部屋に一気に駆け込んだ。
「なんだお前ら!」
突然の乱入者に、一人で見張りをしていた男性が椅子から立ち上がった。床には手足を縛られ、口を布でふさがれたフローラ姫が横たわっていた。一瞬カトリーヌはぎくりとしたが、大きな声で叫んだ。
「そっ、その子を助けに来ました!」
「なんだ、なんだ。ただの子供と犬じゃないか、驚かせやがって。」
中肉中背のひげづらの男は、にやりと笑うと壁に立てかけてあった大振りの剣を取りあげた。
「まさかその剣で俺とやり合おうっていうんじゃないよなあ」
男はせせら笑うと、剣をカトリーヌに向けてきた。カトリーヌは、震える手で、剣をつかむと、鞘を抜き切り、相手の男に剣を構えた。
「ほう、その剣なかなかいい品だなあ。いったどこから盗んできたんだ」
「盗んでいません」
「まあ、いい。それを置いていけば、今なら見逃してやるぞ」
男は下卑た笑いを浮かべると、カトリーヌをじっと見た。
「いいえ、私は戦います!」
「そんなに死に急ぎたいなら、いいだろう。戦ってやるよ!」
男は大振りの剣を、カトリーヌめがけて、振り上げてきた。カトリーヌはとっさに左手の手のひらを自分の剣の切っ先の刀身に置き、右手は柄を持ったままなんとか相手の剣を受け止めた。
「ガキキキッ」
「いいか、この廊下を渡った一番奥の部屋だ。俺がフローラ姫の紐を噛み切るから、その間敵の目を引きつけておいてくれ」
かがんだカトリーヌの耳元で、タムが小声でそう言うと、カトリーヌは手に持った剣を握りしめた。
「なるべくそうなるようにします」
「それでは行くぞ」
タムは一言言うと、風のように走り出した。二人はざっと走り、廊下を渡ると、一番奥の部屋に一気に駆け込んだ。
「なんだお前ら!」
突然の乱入者に、一人で見張りをしていた男性が椅子から立ち上がった。床には手足を縛られ、口を布でふさがれたフローラ姫が横たわっていた。一瞬カトリーヌはぎくりとしたが、大きな声で叫んだ。
「そっ、その子を助けに来ました!」
「なんだ、なんだ。ただの子供と犬じゃないか、驚かせやがって。」
中肉中背のひげづらの男は、にやりと笑うと壁に立てかけてあった大振りの剣を取りあげた。
「まさかその剣で俺とやり合おうっていうんじゃないよなあ」
男はせせら笑うと、剣をカトリーヌに向けてきた。カトリーヌは、震える手で、剣をつかむと、鞘を抜き切り、相手の男に剣を構えた。
「ほう、その剣なかなかいい品だなあ。いったどこから盗んできたんだ」
「盗んでいません」
「まあ、いい。それを置いていけば、今なら見逃してやるぞ」
男は下卑た笑いを浮かべると、カトリーヌをじっと見た。
「いいえ、私は戦います!」
「そんなに死に急ぎたいなら、いいだろう。戦ってやるよ!」
男は大振りの剣を、カトリーヌめがけて、振り上げてきた。カトリーヌはとっさに左手の手のひらを自分の剣の切っ先の刀身に置き、右手は柄を持ったままなんとか相手の剣を受け止めた。
「ガキキキッ」