それを聞いたフローラ姫は、目を静かに閉じた。それから再び目を開けると彼女の目は怒りに燃えていた。
「パーリヤ! なんて最低な奴なの」
『フローラ、まだ話は途中なのです』
「まだ他にもあるのですか」
 カトリーヌは更にびっくりした様子で、マリア王妃に訊いた。
『そうですよ、カトリーヌ』
 マリア王妃が優しい声で答えると、カトリーヌは再び驚いて尋ねた。
「なぜ、私の名前を知ってるんですか」
『それはあなたも私の娘だからです』
 一瞬、三人は、えっ!っといった表情を浮かべた。
「どっ、どういうことですかっ!」
今までの中で一番驚き、カトリーヌはたたみかけるようにマリア王妃に訊いた。
『フローラとあなたは双子の姉妹として生まれたのですよ。姉がフローラ、妹がカトリーヌとして』
「私達が双子ですって?! でも王はそんな話してくれたことは一度もないわ」
『それはそうですよ。国にお披露目される前に、カトリーヌは何者かによってさらわれてしまったのです。双子のうち、一人がさらわれてしまったことは、国としては恥です。その恥をさらすわけにいかず、タブーとなったのです。その時はまさか真犯人がパーリヤだったなんて知らずに私達はいました』
「パーリヤさんが私をさらったんですか?!」
 カトリーヌは耳を疑うしかなかった。パーリヤは確かにカトリーヌをぞんざいに扱ってきたが、まさかそこまでする人とは思わなかったのだ。信じられない思いとともに、パーリヤへの恐怖を感じずにはいられなかった。
『残念ながら、そうなのです。カトリーヌには不自由な思いをさせてしまったと思うのです。もちろん、私達も探したのですよ。あちこちをくまなく。しかしパーリヤは魔法を使って、うまく隠してしまったのです。ほとぼりが冷めた頃、あなたをこの魔女の塔の近くに住まわせたのです』
「私が魔女の塔の近くに住んでいることも知っていたのですか?」
『もちろん、幽霊になってから知ったのですよ』
「それでしたら、こんなに近くにいるのだったら、幽霊の姿でもいいから現れてくれもよかったのではないですか」
 納得いかなそうな表情で、カトリーヌは呟いた。
『パーリヤによって魔法がかけられていたのです。幽霊となっても、身内に姿や声をかけられないように』
「じゃあ、どうして今は私達に声が聞こえるの?」
フローラ姫の問いに、マリア王妃が答えた。