「まあ、私がいればこんなもんよね」
彼女はそっくり返りそうな勢いで、そう言った。
「それより、このドアほんとに鍵がかっているの?」、
三人の目の前にある角ばった赤いドアは、中央に大きなト音記号の飾りがぐるりと彫られていた。ドアノブは金色に輝き、その下には四分音符の形をした鍵穴がこさえられていた」。
「ずいぶんとおかしな形の鍵穴ね」
フローラ姫は、鍵穴を覗き込んだ。しかし中は真っ暗で何も見えなかった。それから彼女はドアノブをゆっくり回してみた。しかし、ドアが開くことはなかった。
「とりあえず、思いつく限りの魔法の呪文を唱えてみます」
カトリーヌはそう言うと、本で覚えた鍵にまつわる呪文をひとつずつ試していった。あれも駄目、これも駄目。次々と呪文を唱えていったが、どれもしっくりこない。せっかくドアの前まで来れたのに、ここで諦めるわけにはいかなかった。それは三人とも同じ気持ちだった。
「どれ、今度は俺が呪文を唱えてみよう」
カトリーヌが一通り、呪文を唱え終ると、タムがそう言ってあとを引き継いだ。彼もまた思いつく限りの呪文を唱えてみたが、ドアはぴくりともしなかった。二人の様子を見ていたフローラ姫は、顔に手をやり唸った。
「今までのことを考えると、ひょっとしたら魔法を使ったらいけないのかもしれないわね」
考え深げに言う彼女に、タムは言った。
「魔法を使わずに鍵を持ってこいってことか。しかし鍵を見つけるのは至難の業だな。きっとパーリヤが肌身離さずに持っているに違いない」
「そうねえ、そうとも言えるけど。でも鍵穴が音符の形をしているんじゃあ、普通の鍵では開かなそうね」
「音符とはなんだ」
タムは耳慣れない言葉に、眉間にしわを寄せた。
「音楽を奏でるために必要な記号のことよ」
フローラ姫が教えると、カトリーヌは大きく頷いた。
「楽譜に並んでいる記号のことですね」
「あら、あなた楽譜見たことあるの?」
意外そうに言うフローラ姫に、カトリーヌは相槌を打った。
「本に載ってました」
「それはきっと音楽に関する本だったのね」
「ええ、そうです。世の中には歌というものがあることを知りました」
「あなた、歌聴いたことないの?」
「ええ、そうなんです。一度聴いてみたいとは思いますが」
「歌を聴いたことないなんて、それはとても損な人生だと思うわ」
「そうなんですか」
彼女はそっくり返りそうな勢いで、そう言った。
「それより、このドアほんとに鍵がかっているの?」、
三人の目の前にある角ばった赤いドアは、中央に大きなト音記号の飾りがぐるりと彫られていた。ドアノブは金色に輝き、その下には四分音符の形をした鍵穴がこさえられていた」。
「ずいぶんとおかしな形の鍵穴ね」
フローラ姫は、鍵穴を覗き込んだ。しかし中は真っ暗で何も見えなかった。それから彼女はドアノブをゆっくり回してみた。しかし、ドアが開くことはなかった。
「とりあえず、思いつく限りの魔法の呪文を唱えてみます」
カトリーヌはそう言うと、本で覚えた鍵にまつわる呪文をひとつずつ試していった。あれも駄目、これも駄目。次々と呪文を唱えていったが、どれもしっくりこない。せっかくドアの前まで来れたのに、ここで諦めるわけにはいかなかった。それは三人とも同じ気持ちだった。
「どれ、今度は俺が呪文を唱えてみよう」
カトリーヌが一通り、呪文を唱え終ると、タムがそう言ってあとを引き継いだ。彼もまた思いつく限りの呪文を唱えてみたが、ドアはぴくりともしなかった。二人の様子を見ていたフローラ姫は、顔に手をやり唸った。
「今までのことを考えると、ひょっとしたら魔法を使ったらいけないのかもしれないわね」
考え深げに言う彼女に、タムは言った。
「魔法を使わずに鍵を持ってこいってことか。しかし鍵を見つけるのは至難の業だな。きっとパーリヤが肌身離さずに持っているに違いない」
「そうねえ、そうとも言えるけど。でも鍵穴が音符の形をしているんじゃあ、普通の鍵では開かなそうね」
「音符とはなんだ」
タムは耳慣れない言葉に、眉間にしわを寄せた。
「音楽を奏でるために必要な記号のことよ」
フローラ姫が教えると、カトリーヌは大きく頷いた。
「楽譜に並んでいる記号のことですね」
「あら、あなた楽譜見たことあるの?」
意外そうに言うフローラ姫に、カトリーヌは相槌を打った。
「本に載ってました」
「それはきっと音楽に関する本だったのね」
「ええ、そうです。世の中には歌というものがあることを知りました」
「あなた、歌聴いたことないの?」
「ええ、そうなんです。一度聴いてみたいとは思いますが」
「歌を聴いたことないなんて、それはとても損な人生だと思うわ」
「そうなんですか」