「もしあなたが弟子だったとしたら、あいつにいいように利用されているわ。だって食べ物もろくに与えていないんですもの、あなたに」
「いえ、私はこれで十分ですから」
「いいえ、そうはいかないわ。もっと権利を主張すべきよ! それにパーリヤって魔女、前からうさんくさいと思ってたのよね。城の中で威張ってて」
「パーリヤさんのこと、よく知ってるんですか?」
 恐る恐るそう訊くと、彼女はむっとした顔をするとこう告げた。
「ええ、城にさんざん出入りしているからね、あいつ。一応お抱え魔法使いだしね。知ってると言ったら、あなたの方がよく知ってるはずでしょ」
 そう訊かれて、カトリーヌはうなだれた。
「いいわ! 私が行って、とっちめてやる! って思ったら……。今は駄目ね。そう、今は駄目だわ……」
 今まで意気揚々としゃべっていた少女は、急にしゅんとすると、深いため息をついた。
「ともかく、今私はお腹がすいて立って歩くこともできないの。だから、あなたのくれたこの木の実、ほんとに頂いてよろしいのかしら?」
 少女は座り込んだまま、カトリーヌに尋ねた。
「もっ、もちろんです」
 しどろもどろになりながらも、カトリーヌは頷いた。彼女はいくつかの木の実を食べると、少し体力が回復したのか、ゆっくりと立ち上がった。見ると、背丈はほぼ同じだった。そして……。
「あなた、ちょっとその顔!」
 びっくりした様子の彼女とカトリーヌの視線が絡み合った。
「そっくりだわ! 私とあなた、顔がそっくりだわ」
 カトリーヌも驚いた様子で、彼女の顔をしげしげと見た。色白の顔も二重のまぶたも、ほっそりとした鼻の形も、焦げ茶色の髪の色まで、何もかもがそっくりだった。
「こんなことってあるのかしら。よく世の中には、自分にそっくりな人が三人はいるっていうけど……。ここまでそっくりだとびっくりだわ! ところで、あなた名前はなんというの?」
「カトリーヌです」
「そう、私は、ふ、えっとお、エリザベスというの。よろしくね」
 エリザベスは少し気まずそうな笑顔を浮かべると、そう答えた。
「それにしても、カトリーヌと私がこんなにそっくりっていうのは、神様の思し召しなのかも。そうだわ!」
 彼女はぱんっと手を叩くと、カトリーヌに頼み込んだ。
「実はもう一つお願いがあるんだけど、カトリーヌ」
「な、なんですか」