「それはそうですが……」
 なんとも解せないカトリーヌだったが、しかしだからといって、上がどうなっているのか全く興味がないわけではない。むしろ前から気になってはいた。
「はいはい、心配するより行動あるのみよ。それにほんとにそんなに怖いものなんてないわよ、世の中に。とりあえず図書室に行きましょう」
「図書室だったら、いつも私も行ってますし、そんな重要なものはなさそうです」
 カトリーヌが、もごもごとそう言うと、エリザベスは自信満々にこう告げた。
「大丈夫。単純に私が見たいだけだから。私こう見えて読書家なのよ。それにさっきの古代語の本も見てみたいし」
 好奇心の塊のようなエリザベスは、図書室のある階に通じる階段を上り始めた。カトリーヌも、図書室ならと階段を上って行った。上ると、更に上へ行く階段と、図書室やその他の部屋が並んでいる廊下に出た。
「図書室はこの廊下の突き当たりです。その他の部屋は鍵がかかっています」
「あら、鍵がかかっているの」
 エリザベスは、肩を落としてがっかりした。
「だからこの上の階に行っても、みんな鍵がかかっているかもしれませんよ。行っても意味ないかもしれません……」
「行ってみないと分からないじゃない! とにかく私達は行くの!」
「わっ、分かりました」
 カトリーヌはエリザベスの気迫に押されて、言葉を呑み込んだ。二人は廊下を突き進み、図書室のドアの前までやってきた。カトリーヌはドアを押し開けた。するとドアは音もなく開いた。
 図書室の中に入ったエリザベスは唸った。
「うーん、ずいぶんと広いわね。城の図書室より広いんじゃないかしら」
 エリザベスは頭に手をかざし、本棚の列を目を凝らして見つめた。
「どうでもいいけど、なんかこの図書室変ね」
「どうしてですか」
 きょとんとした表情でカトリーヌが、隣に立っているエリザベスを見た。
「だって、どう見ても、外で見た魔女の塔の大きさよりも、広く感じるのよ。見てよ。まるで本棚が地平線まで続いてような感じじゃない」
 その通りだった。普通だったら、最後の本棚の先には、壁があるものだが、この図書室では本棚が果てなく続いていて、壁が見えなかった。