「まあ、私が本気になればこんなもんよ!」
 そう言って、そっくり返りそうになったが、大事なことを思い出したかのように、すぐさま指を鳴らした。
「じゃあ、仕事は終わりってことね。それなら、魔女の塔の中を探検しない?」
「探検ですか……」
 カトリーヌは気乗りしなそうな表情を浮かべながら、肩をすくめた。
「そうよ。パーリヤは、城ですごい威張ってるのよ。あいつの弱みを見つけて、ぎゃふんと言わせなきゃ」
「でも……」
「もし、ぎゃふんと言わせることができたら、あなたの待遇もよくなると思うわ」
「私の待遇?」
「そう、たとえばもっとちゃんとした魔法の勉強とかもしたいでしょ?」
「そ、それは……」
「もし、あいつの弱みを見つけられたら、あなたはもっと魔法の勉強ができるようになるのよ」
 エリザベスは微笑んだ。
「それは本当ですか?」
「間違いないわ。私、こう見えて、城では地位があるのよ。だからあいつの弱みさえあれば、王に言ってあげるわ」
「王様に陳情するんですか?! それは大丈夫なんですか」
「大丈夫よ。もう、それは間違いなく大丈夫だから、カトリーヌはそんな不安よりも、今はあいつの弱みを見つけることに専念するのよ。だから魔女の塔の中を探検しましょう。決まりね!」
 有無を言わせないエリザベスに押され、カトリーヌは、彼女とともに魔女の塔の中を探検することになった。
台所を出ると、二人は先程の廊下をまっすぐ歩いて行った。そして壁に突き当たると、エリザベスは訊いてきた。
「下の階は地下倉庫だったのは分かったけれど、上の階には何があるの?」
「図書室があります。図書室の上にも部屋がありますが、私が行っていいと言われているのは、図書室のみです。上階に何があるかは、私は知りません」
「だったらその図書室より上の階が、怪しいわね。パーリヤは良からぬものを隠しているかもしれないわね」
エリザベスは、思案顔で言うと、カトリーヌはか細い声で訊いた。
「ほんとに上の階に行くんですか」
 もし恐ろしい魔法や幻獣を隠していたとしたら、ひどい目には遭うのは、間違いなく自分だと思った。
「あら、そんなに怖がらなくてもいいんじゃない」
「なぜですか」
「良からぬものと言っても、秘密文書とかそういう類よ。そもそも危険な物とかは置いてないんじゃないかしら。だって自分がやられちゃったら元も子もないじゃない」