カトリーヌは、エリザベスを見やると、彼女は目をまん丸に見開き、自分の前にあるものを指差した。そこには、大きな銀のお盆に、かぼちゃのスープ、七面鳥の丸焼き、ソーセージの入ったプディング、ナッツがふんだんに入ったドライフルーツケーキ、焼きたてのパンがごっそり置いてあった。よく見るとお盆の端っこに白いカードが置いてあって、『城から来た使者への食事 デリザスより』といったことが書かれてあった。カトリーヌは笑った。
「デリザスはしっかりエリザベスの言うことを聞いていたんですね。食事を用意してくれるなんて、デリザスはずいぶん、エリザベスのこと気に入ってくれたみたいですね」
 エリザベスは、ちょっと顔を赤らめながらも、胸を張って言った。
「そっ、そうよ。私は猫には好かれる性質なんだから!」
 エリザベスは大きな銀のお盆を抱えると、ドアごしに部屋の中にいるデリザスに声をかけた。
「料理ありがとう。しっかり頂くわ」
 それに答えるかのように、部屋の中からデリザスのか細いにゃあという鳴き声が聞こえてきた。
「ほんとに猫にしか見えないのに、猫以上の働きね」
 エリザベスは小声でカトリーヌに言った。
「せっかくだからあなたの小屋で食べましょう。この塔の台所は不気味なものが置いてあって、なんだか食欲が失せるから」
 エリザベスはカトリーヌを引き連れて、魔女の塔を出ると、料理とともにカトリーヌの小屋へと戻った。
 小屋の中へと入ると、エリザベスは銀のお盆を部屋の真ん中にある、木のテーブルの上に置いた。カトリーヌは早速、暖炉の火種を掻き起こし、薪をくべるとやかんをかけてお湯を沸かし出した。それから銀のお盆の中の料理を、それぞれ二人分の皿へと取り分けた。テーブルの椅子は、ちょうど二脚あったので、二人は向かい合って座った。
「さあ、早く食べてしまいましょうよ。せっかくの料理が冷めてしまうわ」
 素敵なごちそうを前に、エリザベスのお腹の虫は最高潮に達したらしく、ぐうぐうお腹を鳴らした。
「ええ、そうですね」
 カトリーヌは、ふふっと笑うと、やかんが、しゅっしゅっと鳴りだしたので、暖炉からおろし、木のコップにお茶を入れるとエリザベスに渡した。
「いい香りのするお茶ね」
 エリザベスは、甘いまろやかな匂いを嗅ぎながら、その黄色の液体を、じっくりと味わった。
「それは豚のしっぽ草を煮詰めたお茶です」