「あら、猫ちゃんとはあんまり仲良しじゃないのね」
「はい、私はそんなつもりないんですが、どうも嫌われているみたいで」
「だったら、私が入るわ」
「え?」
カトリーヌが目を丸くしてエリザベスを見ると彼女はこう続けた。
「私、城にいる猫とは仲良しなの。きっとデリザスは私を気に入るわ」
「でもデリザスはかなり警戒心の強い猫ですよ」
「いいから、いいから。私を猫部屋に連れて行って」
エリザベスが強引に言うので、カトリーヌはしかたなく彼女を連れて部屋を出ると、廊下を渡って、右へと曲がった。そこには小さな丸い木のドアがあって、デリザスの部屋と書かれた札がぶらさがっていた。
「デリザスはこの部屋の中です」
カトリーヌが言い終わらないうちにエリザベスはさっとドアを開けた。部屋の中は、真っ白な壁に囲まれていた。それだけでなく、流し台も、料理する作業台も、白の塗料で塗られていて、爽やかなイメージに包まれていた。胡椒や塩といった調味料もきれいに白い棚に並び、フライパンや鍋も定位置らしき場所に置かれていた。ゴミひとつない規則正しい部屋の中でひとつ気になることといえば、一つの棒に麻ひもがぐるぐる巻きに巻かれ、それだけが何かに切りつけられたようにぼろぼろになっていることぐらいだった。エリザベスは、すぐさまその部屋の中に入ると、背の高い食器棚の上に、この部屋の主をめざとく見つけた。デリザスは雪のような真っ白な猫だった。白猫はゆったりとくつろいでいたが、エリザベスが入ってきたとたん、急に立ち上がり、じっとこちらを窺い出した。
「こんにちは、デリザス。私は城から来た使いの者よ。いろいろ用があってきたんだけど、ここに来るまでにお腹が空いてしまったの。それでもしよろしければ、少し食べ物を分けて頂けないかしら」
エリザベスは、にこにこした笑顔を振り巻きながら、デリザスにそう話しかけた。すると白猫はみゃあとひと声鳴いた。
「あら、ずいぶんと猫そのものなのね」
さっきのガリヤがしゃべるカラスだったので、エリザベスは猫もまた人の言葉をしゃべるだろうと思ったのだ。エリザベスの後ろでこっそり部屋をのぞいていたカトリーヌは助言した。
「はい、私はそんなつもりないんですが、どうも嫌われているみたいで」
「だったら、私が入るわ」
「え?」
カトリーヌが目を丸くしてエリザベスを見ると彼女はこう続けた。
「私、城にいる猫とは仲良しなの。きっとデリザスは私を気に入るわ」
「でもデリザスはかなり警戒心の強い猫ですよ」
「いいから、いいから。私を猫部屋に連れて行って」
エリザベスが強引に言うので、カトリーヌはしかたなく彼女を連れて部屋を出ると、廊下を渡って、右へと曲がった。そこには小さな丸い木のドアがあって、デリザスの部屋と書かれた札がぶらさがっていた。
「デリザスはこの部屋の中です」
カトリーヌが言い終わらないうちにエリザベスはさっとドアを開けた。部屋の中は、真っ白な壁に囲まれていた。それだけでなく、流し台も、料理する作業台も、白の塗料で塗られていて、爽やかなイメージに包まれていた。胡椒や塩といった調味料もきれいに白い棚に並び、フライパンや鍋も定位置らしき場所に置かれていた。ゴミひとつない規則正しい部屋の中でひとつ気になることといえば、一つの棒に麻ひもがぐるぐる巻きに巻かれ、それだけが何かに切りつけられたようにぼろぼろになっていることぐらいだった。エリザベスは、すぐさまその部屋の中に入ると、背の高い食器棚の上に、この部屋の主をめざとく見つけた。デリザスは雪のような真っ白な猫だった。白猫はゆったりとくつろいでいたが、エリザベスが入ってきたとたん、急に立ち上がり、じっとこちらを窺い出した。
「こんにちは、デリザス。私は城から来た使いの者よ。いろいろ用があってきたんだけど、ここに来るまでにお腹が空いてしまったの。それでもしよろしければ、少し食べ物を分けて頂けないかしら」
エリザベスは、にこにこした笑顔を振り巻きながら、デリザスにそう話しかけた。すると白猫はみゃあとひと声鳴いた。
「あら、ずいぶんと猫そのものなのね」
さっきのガリヤがしゃべるカラスだったので、エリザベスは猫もまた人の言葉をしゃべるだろうと思ったのだ。エリザベスの後ろでこっそり部屋をのぞいていたカトリーヌは助言した。