「……では、両者とも準備はよろしいですな? "神聖軍器"が戦闘不能、もしくは操縦士が敗北を認めた場合、勝敗は決するものとします」
審判の声に、私とマルコ君は静かにうなずく。
聖女召喚された翌日。
私たちは広大な荒れ地に立っていた。
ここはマルコ領と第99皇子領のちょうど国境。
"帝位継承権争い"は互いの領地が接する場所で行うのがしきたりとのことだ。
荒れ地の周囲は、小型のドローンみたいなアイテムが何体も飛び交う。
この国では放送技術も発展しているらしく、私たちの戦いはテレビ放送のように放映されると聞いた。
空中には領民と思しき人々の顔が、何百人も映像となって浮かんでいる。
みな、緊張した面持ちだ。
そして、私たちの前には……。
「おいおい、何だよこのデカ女は。趣味の悪い人形かと思ったぜ」
ヘラヘラと笑いながら私を小馬鹿にする少年と、おつきと思われるメイドがいた。
少年は金髪碧眼の麗しい見た目なのだけど、性格の悪そうな顔つきが全てを台無しにする。 彼が今回の敵、トニー第99皇子だった。
マルコ君は厳しい表情で話す。
「トニー兄さん、言葉を慎んでください。神聖な"帝位継承権争い"の前ですよ」
「よぉ、マルコ。そんなとこにいたのか。相変わらずチビだな。どこにいるか探しちまったぞ」
注意されても、トニー皇子はヘラヘラと笑ったままだ。
身長は君もそれほど変わらないけどね。
「おやおやおやぁ? 俺の気のせいかぁ? “神聖軍器”がないようだがぁ? ……ああ、そうだった。お前の領地は貧乏だから作れないんだよな」
トニー皇子はわざとらしく額に手を当て、遠くをきょろきょろと見回す。
マルコ領の事情がわかった上でやっているのだろう。
どこの世界にも"嫌なヤツ”っているもんだ。
「僕の"神聖軍器"はありません。その代わり……この茜さんが戦います。聖女としてこの世界に来ていただきました」
「このデカ女が!? ギャハハハハッ! どうやって戦うんだよ!」
「【巨大化】スキルで大きくなり戦っていただくのです」
「なに、夢見てんだ! マルコみたいな雑魚皇子は家に帰って寝てろ!」
私が戦うと聞いた途端、トニー皇子とお付きのメイドは激しく高笑いする。
マルコ君はなおも何か言い返そうとしたけど、その前に私が言ってしまった。
「私はいいけど、マルコ君を馬鹿にするのは許さないよ」
「「なっ……!」」
低い声を意識して言うと、トニー皇子とおつきのメイドは固まった。
じわじわとその額に汗が滲む。
昔から、威圧感を出すことだけは得意だった。
じりっと近づいたら、トニー皇子は叫んだ。
「お、お前なんかが僕様の"神聖軍器"に勝てるわけない! 逃げるなら今だぞ!」
捨て台詞を吐くと、トニー皇子たちは逃げるように立ち去った。
私たちも審判に促され、後方にある所定の位置へ向かう。
歩きながらマルコ君は静かに話した。
「トニー兄さんは僕より数ヶ月しか年上ではありませんが、幼少期からずっと馬鹿にしてくる人物でした。きっと、自分より下の人間が僕しかいなかったからでしょう」
「そうだったんだ……。お兄さんと仲良くなれないのは辛いね」
「まぁ、トニー兄さんの気持ちもわかります。生まれたときから、"帝位継承権争い"に勝つ責務を担っているのですから。他の兄たちも、生き残りに必死なのです」
マルコ君は硬い表情で語るも、語気を荒げるようなことはない。
まだ十歳ということだけど、私よりずっと大人びて見えた。
所定の位置につくと、マルコ君が俯きながら険しい顔で話した。
「茜さん。重ねてにはなりますが……このようなことに巻き込んでしまい、申し訳ありません……。僕から頼んだことではありますが、巨大なロボットと生身で戦わせるなんて……」
マルコ君の瞳から、小さな涙が一筋零れる。
領民を豊かにしなければならないという皇子の責務と、異世界の人間に頼らざるを得ない状況……。
その重圧の板挟みを思うと、マルコ君の辛い心境が伝わってきた。
私はその小さな手をそっと握る。
「もう……謝らないで。これもきっと、私の運命だったんだよ。それに、むしろ聖女召喚してくれてよかった。桃花をこの世界で一人っきりにしちゃうところだったから」
「茜さん……」
「だから、マルコ君は笑顔で応援してほしいな。皇帝になって領民の暮らしをよくするんでしょ? それに心配しないで。私、こう見えて鍛えてるから」
力こぶを見せながら素直な気持ちを伝えると、マルコ君はしばしポカンとした。
でも、すぐに涙を拭って笑顔を浮かべてくれた。
「ありがとうございます、茜さん。たしかに、僕が元気じゃないとダメですね。では……頑張ってください! 領民たちも茜さんを応援しています!」
マルコ君が元気よく叫ぶと、マルコ領の民たちの映像からも歓声が上がる。
『頑張れ、聖女様ー! 勝ってくれー!』
『私たちのために、この世界に来てくれてありがとうー!』
『無理そうだったら棄権してくださいね!』
彼らは私が聖女召喚された身であることをすでにマルコ君から聞かされており、好意的に私を受け止めてくれた。
心がほんわかするものの、そろそろ気合いを入れ直さなければ。
前方では、トニー皇子の"神聖軍器"が起動しつつある。
くすんだオレンジ色のずんぐりむっくりした形態で、巨大な作業用ロボットを思わせるデザインだ。
正式名称はグリムリッパーだと、マルコ君が教えてくれた。
見る限りミサイルやレーザーみたいな装備はないけど、右手には大きなスコップを持っているので油断はならない。
マルコ君を見ると、こくりとうなずいた。
私は右拳を空に突き上げ、全身に力を込める。
「……【巨大化】!」
私の身体がぐんぐん大きくなり、あっという間に20mほどの大きさになった。
これが【巨大化】スキルの能力。
昨日、マルコ君や王宮の人たちにスキルの使い方を教えてもらいながら、何度も練習したのだ。
各領民の映像から驚きの声が上がる。
正面に立ちはだかるグリムリッパーから、トニー皇子の声が鳴り響いた。
「な、なんでデカくなってんだ! ありえねえだろ!」
「私のスキルの力だよ」
大型ドローンに乗った審判が空中に舞い上がると、徐々に辺りを静けさが包み込む。
トニー皇子は立ち止まり、私もファインティングポーズを取り、開始の合図を待つ。
「それでは、"帝位継承権争い"……初め!」
審判が叫んだ瞬間、トニー皇子の"神聖軍器"がズシズシと駆け寄ってくる。
「生身の人間が"神聖軍器"に勝てるわけないだろうが!」
スコップを振り上げ、勢いよく叩き下ろしてきた。
横に避けて躱し、空いた胴体に軽いジャブを当てる。
硬い金属を殴った感触(当たり前だけど……)の後、ワークキングの身体がぐらりと揺れた。
さらに追撃のジャブをお見舞いする。
ワークキングが態勢を崩して数歩下がると、マルコ領の民たちがわっと盛り上がった。
『おおおー! あの聖女様すげえぞ! 戦える聖女様だ!』
『"神聖軍器"相手でも決して遅れをとっていない!』
『戦乙女みたいで素敵ね!』
戦いながら私は前世の記憶と経験を思い返す。
いくら巨大メカでも、人型なら総合格闘技の経験が十二分に活かせる。
ワークキングがスコップを右左と振り回すけど、隙を見て何度もジャブを喰らわせた。
少しずつ頑丈そうな金属の肉体が凹む中、トニー皇子の怒る声が轟く。
「ク、クソッ! 何で当たらないんだ! おかしいだろ! こっちは"神聖軍器"なんだぞ!」
「ロボットより……人間の方が強いんだよ」
脳裏に浮かぶのは、前世で戦った数多の強敵。
ボクシング、空手、柔道、拳法、相撲、カポエイラ、ムエタイ、テコンドー、レスリング、喧嘩……。
そのどれよりもワークキングの動きは遅く、機械的だった。
大きくスコップを振り上げた瞬間、勝利の糸筋が見えた。
……ここだ!
「《メテオアッパー》!」
腰に力を込め、ワークキングの顎に全力のアッパーを喰らわす。
ガォンッ! という鈍いが響いた後、無骨なデザインの頭が音もなく宙を舞った。
私の遥か後方に落ちる振動を感じる。
ワークキングは電池の切れたおもちゃのように力なく崩れ落ちる。
一瞬の静寂の後、審判が大きな声で叫んだ。
「トニー皇子の"神聖軍器"、起動停止しました! よって……マルコ皇子の勝利ー!」
空中に映し出された映像から、マルコ領の民たちの歓声が上がる。
『『……勝った! 聖女様が勝ったぞー!』』
まるでサッカースタジアムにいるかのごとく、大歓声が私を包む。
巨大化を解除して元の大きさに戻ると、マルコ君が急いで走り寄ってきた。
「やりましたね、茜さん! 茜さんなら絶対に勝ってくれると思っていました!」
「ありがとう、みんなの応援のおかげだよ」
マルコ君と手を握り合って勝利を祝う。
その顔には、もう辛そうな表情はない。
彼の晴れ晴れとした表情に、私の心も明るくなった。
トニー皇子はというと、魂が抜けた様子で呆然と佇んでいた。
空中の映像から、マルコ領の人々が喜ぶ声が聞こえる。
『うおおおお! デカ女最高ー!』
『デカ女こそ我らが救世主ー!』
『デカ女の聖女様ー! 本当にありがとうございます!』
デカ女を讃える声の嵐。
マルコ君もまた、嬉しそうに私を誉めた讃えてくれる。
「茜さん、あなたこそこの世界最強のデカ女さんでいらっしゃいます!」
「……うん、そうだね」
無事、最初の"帝位継承戦争い"に勝利でき、桃花の救出にも一歩近づいた。
鍛えてきた自分の力や日本での経験値が活かせてよかった。
でも、これだけは言わせてほしい。
――……こんなデカ女ブームは頼んでない!!
審判の声に、私とマルコ君は静かにうなずく。
聖女召喚された翌日。
私たちは広大な荒れ地に立っていた。
ここはマルコ領と第99皇子領のちょうど国境。
"帝位継承権争い"は互いの領地が接する場所で行うのがしきたりとのことだ。
荒れ地の周囲は、小型のドローンみたいなアイテムが何体も飛び交う。
この国では放送技術も発展しているらしく、私たちの戦いはテレビ放送のように放映されると聞いた。
空中には領民と思しき人々の顔が、何百人も映像となって浮かんでいる。
みな、緊張した面持ちだ。
そして、私たちの前には……。
「おいおい、何だよこのデカ女は。趣味の悪い人形かと思ったぜ」
ヘラヘラと笑いながら私を小馬鹿にする少年と、おつきと思われるメイドがいた。
少年は金髪碧眼の麗しい見た目なのだけど、性格の悪そうな顔つきが全てを台無しにする。 彼が今回の敵、トニー第99皇子だった。
マルコ君は厳しい表情で話す。
「トニー兄さん、言葉を慎んでください。神聖な"帝位継承権争い"の前ですよ」
「よぉ、マルコ。そんなとこにいたのか。相変わらずチビだな。どこにいるか探しちまったぞ」
注意されても、トニー皇子はヘラヘラと笑ったままだ。
身長は君もそれほど変わらないけどね。
「おやおやおやぁ? 俺の気のせいかぁ? “神聖軍器”がないようだがぁ? ……ああ、そうだった。お前の領地は貧乏だから作れないんだよな」
トニー皇子はわざとらしく額に手を当て、遠くをきょろきょろと見回す。
マルコ領の事情がわかった上でやっているのだろう。
どこの世界にも"嫌なヤツ”っているもんだ。
「僕の"神聖軍器"はありません。その代わり……この茜さんが戦います。聖女としてこの世界に来ていただきました」
「このデカ女が!? ギャハハハハッ! どうやって戦うんだよ!」
「【巨大化】スキルで大きくなり戦っていただくのです」
「なに、夢見てんだ! マルコみたいな雑魚皇子は家に帰って寝てろ!」
私が戦うと聞いた途端、トニー皇子とお付きのメイドは激しく高笑いする。
マルコ君はなおも何か言い返そうとしたけど、その前に私が言ってしまった。
「私はいいけど、マルコ君を馬鹿にするのは許さないよ」
「「なっ……!」」
低い声を意識して言うと、トニー皇子とおつきのメイドは固まった。
じわじわとその額に汗が滲む。
昔から、威圧感を出すことだけは得意だった。
じりっと近づいたら、トニー皇子は叫んだ。
「お、お前なんかが僕様の"神聖軍器"に勝てるわけない! 逃げるなら今だぞ!」
捨て台詞を吐くと、トニー皇子たちは逃げるように立ち去った。
私たちも審判に促され、後方にある所定の位置へ向かう。
歩きながらマルコ君は静かに話した。
「トニー兄さんは僕より数ヶ月しか年上ではありませんが、幼少期からずっと馬鹿にしてくる人物でした。きっと、自分より下の人間が僕しかいなかったからでしょう」
「そうだったんだ……。お兄さんと仲良くなれないのは辛いね」
「まぁ、トニー兄さんの気持ちもわかります。生まれたときから、"帝位継承権争い"に勝つ責務を担っているのですから。他の兄たちも、生き残りに必死なのです」
マルコ君は硬い表情で語るも、語気を荒げるようなことはない。
まだ十歳ということだけど、私よりずっと大人びて見えた。
所定の位置につくと、マルコ君が俯きながら険しい顔で話した。
「茜さん。重ねてにはなりますが……このようなことに巻き込んでしまい、申し訳ありません……。僕から頼んだことではありますが、巨大なロボットと生身で戦わせるなんて……」
マルコ君の瞳から、小さな涙が一筋零れる。
領民を豊かにしなければならないという皇子の責務と、異世界の人間に頼らざるを得ない状況……。
その重圧の板挟みを思うと、マルコ君の辛い心境が伝わってきた。
私はその小さな手をそっと握る。
「もう……謝らないで。これもきっと、私の運命だったんだよ。それに、むしろ聖女召喚してくれてよかった。桃花をこの世界で一人っきりにしちゃうところだったから」
「茜さん……」
「だから、マルコ君は笑顔で応援してほしいな。皇帝になって領民の暮らしをよくするんでしょ? それに心配しないで。私、こう見えて鍛えてるから」
力こぶを見せながら素直な気持ちを伝えると、マルコ君はしばしポカンとした。
でも、すぐに涙を拭って笑顔を浮かべてくれた。
「ありがとうございます、茜さん。たしかに、僕が元気じゃないとダメですね。では……頑張ってください! 領民たちも茜さんを応援しています!」
マルコ君が元気よく叫ぶと、マルコ領の民たちの映像からも歓声が上がる。
『頑張れ、聖女様ー! 勝ってくれー!』
『私たちのために、この世界に来てくれてありがとうー!』
『無理そうだったら棄権してくださいね!』
彼らは私が聖女召喚された身であることをすでにマルコ君から聞かされており、好意的に私を受け止めてくれた。
心がほんわかするものの、そろそろ気合いを入れ直さなければ。
前方では、トニー皇子の"神聖軍器"が起動しつつある。
くすんだオレンジ色のずんぐりむっくりした形態で、巨大な作業用ロボットを思わせるデザインだ。
正式名称はグリムリッパーだと、マルコ君が教えてくれた。
見る限りミサイルやレーザーみたいな装備はないけど、右手には大きなスコップを持っているので油断はならない。
マルコ君を見ると、こくりとうなずいた。
私は右拳を空に突き上げ、全身に力を込める。
「……【巨大化】!」
私の身体がぐんぐん大きくなり、あっという間に20mほどの大きさになった。
これが【巨大化】スキルの能力。
昨日、マルコ君や王宮の人たちにスキルの使い方を教えてもらいながら、何度も練習したのだ。
各領民の映像から驚きの声が上がる。
正面に立ちはだかるグリムリッパーから、トニー皇子の声が鳴り響いた。
「な、なんでデカくなってんだ! ありえねえだろ!」
「私のスキルの力だよ」
大型ドローンに乗った審判が空中に舞い上がると、徐々に辺りを静けさが包み込む。
トニー皇子は立ち止まり、私もファインティングポーズを取り、開始の合図を待つ。
「それでは、"帝位継承権争い"……初め!」
審判が叫んだ瞬間、トニー皇子の"神聖軍器"がズシズシと駆け寄ってくる。
「生身の人間が"神聖軍器"に勝てるわけないだろうが!」
スコップを振り上げ、勢いよく叩き下ろしてきた。
横に避けて躱し、空いた胴体に軽いジャブを当てる。
硬い金属を殴った感触(当たり前だけど……)の後、ワークキングの身体がぐらりと揺れた。
さらに追撃のジャブをお見舞いする。
ワークキングが態勢を崩して数歩下がると、マルコ領の民たちがわっと盛り上がった。
『おおおー! あの聖女様すげえぞ! 戦える聖女様だ!』
『"神聖軍器"相手でも決して遅れをとっていない!』
『戦乙女みたいで素敵ね!』
戦いながら私は前世の記憶と経験を思い返す。
いくら巨大メカでも、人型なら総合格闘技の経験が十二分に活かせる。
ワークキングがスコップを右左と振り回すけど、隙を見て何度もジャブを喰らわせた。
少しずつ頑丈そうな金属の肉体が凹む中、トニー皇子の怒る声が轟く。
「ク、クソッ! 何で当たらないんだ! おかしいだろ! こっちは"神聖軍器"なんだぞ!」
「ロボットより……人間の方が強いんだよ」
脳裏に浮かぶのは、前世で戦った数多の強敵。
ボクシング、空手、柔道、拳法、相撲、カポエイラ、ムエタイ、テコンドー、レスリング、喧嘩……。
そのどれよりもワークキングの動きは遅く、機械的だった。
大きくスコップを振り上げた瞬間、勝利の糸筋が見えた。
……ここだ!
「《メテオアッパー》!」
腰に力を込め、ワークキングの顎に全力のアッパーを喰らわす。
ガォンッ! という鈍いが響いた後、無骨なデザインの頭が音もなく宙を舞った。
私の遥か後方に落ちる振動を感じる。
ワークキングは電池の切れたおもちゃのように力なく崩れ落ちる。
一瞬の静寂の後、審判が大きな声で叫んだ。
「トニー皇子の"神聖軍器"、起動停止しました! よって……マルコ皇子の勝利ー!」
空中に映し出された映像から、マルコ領の民たちの歓声が上がる。
『『……勝った! 聖女様が勝ったぞー!』』
まるでサッカースタジアムにいるかのごとく、大歓声が私を包む。
巨大化を解除して元の大きさに戻ると、マルコ君が急いで走り寄ってきた。
「やりましたね、茜さん! 茜さんなら絶対に勝ってくれると思っていました!」
「ありがとう、みんなの応援のおかげだよ」
マルコ君と手を握り合って勝利を祝う。
その顔には、もう辛そうな表情はない。
彼の晴れ晴れとした表情に、私の心も明るくなった。
トニー皇子はというと、魂が抜けた様子で呆然と佇んでいた。
空中の映像から、マルコ領の人々が喜ぶ声が聞こえる。
『うおおおお! デカ女最高ー!』
『デカ女こそ我らが救世主ー!』
『デカ女の聖女様ー! 本当にありがとうございます!』
デカ女を讃える声の嵐。
マルコ君もまた、嬉しそうに私を誉めた讃えてくれる。
「茜さん、あなたこそこの世界最強のデカ女さんでいらっしゃいます!」
「……うん、そうだね」
無事、最初の"帝位継承戦争い"に勝利でき、桃花の救出にも一歩近づいた。
鍛えてきた自分の力や日本での経験値が活かせてよかった。
でも、これだけは言わせてほしい。
――……こんなデカ女ブームは頼んでない!!