最初はみんなで話していても、少し時間が経てば数人のグループができあがる。私は運がいいことに、古川くんの隣に移動できた。
 たぶん、なんとなくみんなが気を遣ってくれたんだろうけれど。

「倉田さあ、なんで今回、久しぶりにきてくれたの」
「……ちょうど、仕事の休みがとれて。その、プライベートの用事もなかったし」
「そっか。よかった。今、何の仕事してんの?」
「化粧品メーカーで働いてる。今は法人営業部にいるよ」

 ふうん、と言って古川くんはハイボールを飲んだ。当たり前だけど、高校の頃はお酒なんて飲んでなかったのに。
 ココアとかいちごみるくとか、甘い物をよく飲んでたっけ。

「古川くんは、ペット関連の仕事?」
「ううん。いろいろあって、普通の事務職」
「あ、そうなんだ」

 いろいろってなに? とはさすがに聞けない。仕事の話は掘り下げにくくて、何も言えなくなってしまう。

「倉田はすごいね。東京の大学行って、ばりばり働いて。バリキャリってやつ?」
「そんなことないよ」
「いーや、倉田はすごい」
「……ありがとう」
「昔から頑張り屋だったよね。倉田、偉いよ」

 偉いよ、という言葉で昔を思い出してしまう。目が合うと、古川くんは少しだけ首を傾けた。
 その首の角度も、昔の古川くんと一緒で。だけど古川くんの首は、前よりもちょっと太くなっていて。

「ねえ、倉田。こっそり抜けちゃわない?」
「え?」
「ゲーセン、行こうよ。ほら、バス停近くの。あそこ、まだやってるんだ」

 古川くんがいたずらっぽく笑う。断れるはずもなくて、私は気づいたら頷いていた。

「じゃ、決まりね」