始発の新幹線を使ったおかげで、東京駅についた時、まだ午前9時前だった。日曜日の早朝なだけあって、さすがの東京駅も人通りが少ない。
 なんとなく改札を出て、地下街をうろつく。ぐぅ、とお腹が鳴った。

「……朝ご飯、食べようかな」

 周りにはいくつか空いている店があった。その中で、最近できたばかりの知らない店に入る。開店直後なのか、店内には私しかいない。
 焼き魚定食を注文してすぐ、私は風音に電話をかけた。

『朱里!? こんな朝っぱらからどうしたの? なんかあった!?』
「急にごめんね。ただ、風音にちょっと、お願いしたいことがあって」
『お願い? なに?』
「ちゃんとした恋がしたいから、誰か紹介してくれない?」

 電話越しに、風音が息を呑んだのが分かった。きっといろいろ聞きたいことがあるだろうに、分かった、とだけ言ってくれる。

「ありがとう。外だから、また後で連絡するね」
『分かった。待ってるから、朱里の好きなタイミングで電話して』

 電話を切る。それとほぼ同時に、店員さんが焼き魚定食を運んできてくれた。
 炊き立ての白米に銀鮭、そしてあさりのお味噌汁。シンプルだけれど、食欲をそそるメニューだ。

 いただきます、と手を合わせ、銀鮭から口に運ぶ。

「……美味しい」

 なんだか、すごく美味しい。本当に。涙が出ちゃうくらいに。

 ぐぅ、とまたお腹が鳴った。きっと身体が、エネルギーの不足を強く訴えているのだ。
 食べなきゃ。そして、前に進まなきゃ。

 涙がとまらない。私は、泣きながら朝ご飯を食べ続けた。