「なんでそんなこと聞くの?」

 突然聞いてきた花田君に、私は動揺を隠しながらそう答えた。

「なんでだと思います?」
「さあ?」

 私はあくまでしらをきり通した。花田君が私と課長にあったことを知っているはずがない。

「ばればれですよ?」

 花田君の言葉に、心臓をぎゅっとつかまれたような気がした。

「は?」

 花田君が席を立った。そして私の席にやってくる。

「……何を知っているの?」
「五島さんと課長のことです」
「私と課長? 何を言ってるの?」

 息が苦しい。私と課長の事は事務所中に知れ渡っていたのだろうか。そんなことになっていたら……!

「五島さん、今週、元気ないですよね。今日だって目が腫れてますよ」
「……別に。体調が悪いだけ」

 花田君が私の机を叩いた。

「僕は! 上手く行っているならそれでいいと思っていました。そういう幸せがあるなら、それも一つの道なんだと」
「何、言ってるの?」

 自分の動悸で声が震える。

「五島さんが課長の事を好きだって知ってます!」
「な?! なんで!?」

 瞬時に声が出てしまった。

「そんな……。みんなに知られてるの? 私の気持ち……」

 不安になって花田君に聞いてしまう。

「いや、たぶん皆は気付いてないです」
「そう……。よかった……」

 少し安堵して私は息をついた。そして我に返る。

「じゃあ、なんで花田君は知ってるわけ!? どこまで知ってるの!?」

 私の言葉に花田君は目を吊り上げた。

「なんでわからないんですか!?」
「? わからないよ!」

 花田君の言葉は全く理解ができなかった。この状況で何をどう分かれというのだろう。

「僕が五島さんを好きだからです!」

 花田君が怒鳴るように言った。その言葉は私の頭の中を通り抜けるように吹いて行った。

 なんだろう。このエネルギー。この若さ。

 あれ、なんだかすごいことを言われた気がするけれど……。
 
「意味分かってます?」
「……」

 花田君は一度ため息をついた。

「僕は五島さんが好きなんです」
「花田君が私を?」

 私は半分理解したようなしないような、微妙な感じだった。

「そうです。だから、五島さんが課長を好きなのが分かったんです」
「そうなの……」

 私は他人事のように呟く。

「ああ、もう!」