この月が眠りに就くころ、私たちは──。

青春・恋愛

文屋りさ/著
この月が眠りに就くころ、私たちは──。
作品番号
1727690
最終更新
2024/06/25
総文字数
9,995
ページ数
1ページ
ステータス
完結
いいね数
6
ランクイン履歴

総合65位(2024/07/27)

青春・恋愛30位(2024/07/27)

ランクイン履歴

総合65位(2024/07/27)

青春・恋愛30位(2024/07/27)


***

 その日、私たちは五年ぶりに触れ合った。

 私は彼の中に、ほんの少しでも『私への愛』が残っていないのかどうかを確かめるために、探りながら、求めながら、願いながら触れた。

 けれど彼は、『私に対する愛』が本当に自分の中からなくなっているのかどうかを確かめるために、そしてそれを証明しながら私に触れた。

 「私たち、もう終わりなんだね」

 「そう、だな」

 「ねぇ、聞かせてよ。どうやって私を忘れていったのか。どんなふうに……っ、失恋を乗り越えていくのか」


 私は五年という月日をかけて、少しずつ『彼がいい』と思うようになっていた。

 彼は五年という月日をかけて、少しずつ私から離れていった。


 長いときを経てすれ違ってきた私たちの間にはもう、何も残らない。

 お互いの最期の言葉は、『愛してるよ、浩志』と、『……愛してた、皐月』だった。

 きっと、この静寂な夜を照らしている月が眠って、太陽が顔を出すころ、私たちは──……もう二度と、こうして向かい合うことはない。

***
あらすじ
高校生のときに付き合っていた皐月と浩志。二人が別れてから五年という月日を経て、皐月は様々な恋を経験をして、『やっぱり浩志がいい』と思うようになった。一方で、別れた後もずっと皐月のことを想ってきた浩志は、五年という月日をかけて、ゆっくりと彼女のことを忘れていった。そんな二人が再び接点を持つことはもうない。今夜が最後。真上から照らす月が眠りに就くころ、二人がこうして向い合うことは二度となかった──。

目次

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