そしてそんな僕の嘘を、ずっと一緒に居る彼女が気づかないはずがない。
だから映画館の帰り、お手洗いに行くと言った彼女は、両親に本当のことを確かめようとスマホを開いた。
電話をいくら掛けても二人は出ない。
その時、彼女の両親のスマホは、僕の手の中にあった。
画面が割れたものの、まだ辛うじて使えるそれは、彼女からの着信を伝える。
『おかけになった電話は、電波が届かないところにあるか…』
という典型文の声が流れると、ピーという機械音の後、彼女は留守電を残した。
『お父さん、お母さん。これを聞いたら、折り返してくれないかな。……どうしてか、二人の声が聞きたくなったの。会いに行ってもいいかな…?』
震えるその声は、何度聞いても胸が締め付けられる。
彼女は何となく分かってるんだ。
分かってて、分からない振りをしている。
僕がついた嘘を、暴かないように。
僕の願いを叶えるために。