その後、彼女のスマホの電話帳を開いて、発信履歴を削除する。
両親へと掛けられたそれは、もう意味のないもの。
彼女が事故にあった日、家への帰り道に一人で事故に遭ったと僕は言ったが、あれは嘘だ。
本当は、その日たまたま一緒の休みが取れた彼女の両親が、車で迎えに来てくれて、その道中に信号無視の大型トラックに突っ込まれた。
運転席にいた父親と、助手席に座っていた母親は即死。
でも後部座席にいた彼女だけは助かった。
…一度、本当のことを話したことがある。
その時、彼女は泣いて取り乱して、一時行方不明にまでなった。
だから僕は、一生隠すことにしたんだ。
彼女には一日しかないのに、限られた時間が悲しいだけで終わるだなんてそんなの、あんまりだ。
これは、もう二度と彼女を失う恐怖を味わいたくないという、僕のエゴでもある。