「…私も、ずっと駿ちゃんだけを見てきたよ」
「うん、一緒だね」
きっと今、駿ちゃんは優しく微笑んでいるに違いない。
これまでどれだけその笑顔に救われてきたことか。
駿ちゃんはいつも、いとも簡単に私の心を軽くしてくれる。
「花菜ちゃんは確かに記憶は失くしてしまうけど、花菜ちゃん自身がいなくなるわけじゃないよ。ずっと、僕の大好きな花菜ちゃんだ。…それにね、花菜ちゃんには今日しかないからこそ、一日一日を大切にしようねって二人で約束したんだよ」
「一日一日を大切に…?」
「そう。言いたいこと、やりたいことは伝え合って、後悔のないようにって。僕は花菜ちゃんがいてくれるおかげで毎日幸せだよ。花菜ちゃんにも、少しでもそう思ってもらえるように、今日が幸せだったって沢山笑えるようにしたいんだ」
涙が頬を伝って、抱きしめてくれる駿ちゃんの腕に落ちる。
「ありがとう…、駿ちゃん」
後ろを振り向いて大好きな人の顔を見ると、彼も今にも泣きだしそうな笑みを浮かべていた。
それでも、自分の事は気にせず私の涙を優しく親指で拭ってくれる。
溢れ出した涙を拭いてくれるのは、いつだって駿ちゃんだった。