「宝石が盗まれた!あいつだ!今走って行ったあいつだ!」

 声の方を振り返ると、質屋の店主が叫んでいた。私はその質屋の人に事情を聞きに行った。

 「どうしました?」

 「おお、魔女さんか。あいつが…宝石を盗みやがった!」

 質屋の男が指さした方を見ると紫のロング髪に黒のシルクハット、黒のマントを装着した男がそそくさに質屋から逃げていく姿が見えた。なるほどあいつか…と思った私は、即座に箒を取り出し、猛スピードで強盗を追いかけた。

 「止まってください!そこのあなた!」

 私は静止の声をかけるも、強盗は当然聞き入れない。それどころか強盗はだんだん加速していき、なんと身に着けていたマントを使って飛び始めた。飛べば逃げれるとでも思ってるのだろうか、魔女相手に飛んで逃げれると思ったら大間違い。強盗に合わせて私も高度を高くするが、強盗は逃げの手を緩めない。それでも私は必死に追い続けるが、突然強盗は高度を下げ、地面に降り立った。

 私も高度を下げてさらに追い続けていたが、強盗は次の瞬間、信じられない場所に駆け込んでいった。それはなんと警察署だった。もしかして自首しに行くのか?と思ったけど、普通に考えてありえない。さすがに署の中にまで入ることはできないので、私は遠くから署を見ていた。

 強盗が警官と話しているのがガラス越しに見えた。そしてさっき盗んだ宝石を出し、警官にそれを手渡す。え…何やってんの?これ確実に刑務所入れられるやつ…と思ったけど、なんと警官はにっこりしながら強盗に頭を下げていた。そして次の瞬間、警察の何人かがすぐさまパトカーを出して出動した。

 「え、何が起きているんですか…」

 そして署から出て来た強盗は、すれ違った私にこう言った。

 「奴はまもなく逮捕されるさ。あの宝石は警察から骨董屋に返される。」

 「…そうだったんですね。疑ってすみません。」

 そういうことかと理解した私は、そのまま箒でどこかに飛んで行った。