陰陽道(おんみょうどう)

それは、陽道(ようどう)弐百(200)術と陰道(いんどう)弐百五拾(250)術、陰陽道参百(300)術からなり、(ケガレ)と呼ばれる異形を倒すために編み出された術。

陰陽師(おんみょうじ)と呼ばれる人々は、この陰陽道を用いて穢を(はら)う。

陽道は大気中に存在する()を、陰道はネガティブな感情から体内に蓄積される(しゅ)をエネルギー源としている。

操ることができる氣と呪の量が多い者のみが、陰陽師になることができる。

***

かつてこの世に現れた伝説的な陰陽師、安倍晴明(あべのせいめい)

彼は穢ノ王(ケガレのおう)と呼ばれ、全ての穢の元凶である荒魔(こうま)の肉体を討ち滅ぼした。

荒魔というのは人型で、通常の穢よりも遥かに多い呪力を持ち、陰道を使う穢の祖だ。

だが、穢は厄介なことに精神体としてでも命をつなぐことができる。

そのため、彼は自らに穢ノ王を()かせ、己の全呪力(しゅりょく)、全氣力(きりょく)と引き換えに実質的な無効化を行った。

結果として、一時(いっとき)の平和は訪れた。

しかし、全ては嵐の前の静けさ。

すぐに穢ノ王の手下たちが繁殖し、人類を滅ぼすために人里へと進行してきた。

晴明亡き今、それを止めることができるのは伝説上の陰陽師、天照大神(あまてらす)の生まれ変わりである神子(みこ)のみ。

その最有力候補が亜輝(あかぐ)実稲(みいね)

亜輝家は陽道の名門・亜城(あしろ)家と陰道の名門・奇輝(きかぐ)家が結婚して生まれた陰陽師の名門家。

息をするように穢を祓い、当たり前のように荒魔を使役する。

そんなやんごとなき一族の中でも抜きん出て才能があったのが亜輝実稲。

生まれてすぐに呪と氣を扱い、若干9歳で陽道をマスターし、11歳で陰道、12歳で陰陽道を自由自在に操り、飛び級に飛び級を重ね、最年少で陰陽師の最高ランク・()を獲得した。

その後も最も穢の被害が大きい魔都(まと)と呼ばれる都市に配属され、穢を祓い続けた。

恐らく、後2〜3年もすれば神子(みこ)の称号を手にし、安倍晴明の狩衣(かりぎぬ)を手に入れるだろう、と全員が信じていた。

だがそこに、新星が現れた。

星夜(ほしや)水雫(みしず)

出生出自、全てが不明。

分かっているのは圧倒的な力のみ。

それは、ある意味停滞していた陰陽界に大きな変化をもたらした。

神子候補が1人増えたのだ。

出自不明の不審者を候補者にするなど言語道断。

頭の硬い老人たちが言いそうなクレームは一個も出てこなかった。

それほどまでに、圧倒的な力だったのだ。

彼女はその力で人類を救い、そして裏切った。

全ては、より彼女が強くなるため。

ただ、それだけだったーー。