「あっ…えっと…その…なんというか…。」

海漣(みらん)が気まずそうに言う。

一体、何があったというのか。

「ホントに、覚えてないんだよね?全部忘れちゃったんだよね?」

念押しをするように問いかけてくる。

「うん。」

神妙に頷く。

「じゃあ言うね。新年度が始まった初日以来ーー実稲(みいね)は教室に来てないの。初日に来た時の自己紹介で机を保健室に運び込んで、ずっと保健室で授業を受けてたみたい。私は初日、休んでたから詳しくは知らないんだけど…その…男子たちに告白?されて怒っちゃって、みたいな。」

「はぁ?」

盛大に叫んでしまった。

それもしょうがないことだろう。

まさか、そんな理由だとは思わなかった。

しょうもなすぎる。

瞬間湯沸かし器なのか。

顔がすんごいことになっていた。

周りの生徒達がドン引いている。

慌てて

「ごめんなさい。」

と謝る。

周りの生徒達は

「あの亜輝(あかぐ)が…謝った!?」

と驚いている。

生前…ではないか、前の私は一体どんなことをしでかしたのだろう、本当に。

アンガーマネジメントを教えてあげたい。

どうかもう少し、友達付き合いというものをしてくれ。

それも大きな問題だが。

私の机と椅子が教室になくて、初日以来教室には来ていないということのほうが問題だ。

「私は初日以来教室には来ていない。机と椅子は保健室。男子に告白されたことが原因だと考えられる。で、いいの?」

海漣は静かに頷く。

神妙にする内容ではないだろう。

笑い飛ばしてくれ…。

頼むから…。

「うん。その…告白の内容っていうのが…あまり聞いて気持ちいいものではなかったと言うか…そんな感じで。」

「あぁ。それで怒り心頭な私が、教室を飛び出した、と。」

いや、どういうことやねん!

盛大なツッコミ。

そう考えれば全てに納得がいく、わけはない。

一体全体、どんな告白をされたのか。

周りの反応を見る限り、私はあまり人付き合いをしていなかったみたいだし。

コミュ障ですかねぇ。

とりあえず、最重要は椅子と机の確保。

保健室に行くか。

重い腰を上げた。

「海漣。保健室に行きたいの。案内してくれる?」

海漣の顔がぱぁっと華やぐ。

「うん!」