太陽が空高く昇った頃。

私は携帯電話という名の文明の利器を駆使し、なんとか学校にたどり着いていた。

どうやら、国立陰陽師学校は中等教育学校ーーつまり、”中学校”のようだ。

弐の弥生にいる私は、わかりやすく言うと2の3。

つまるところ中学校2年生というわけだ。

思っていたよりも遥かに幼く、驚きを隠せない。

細長い校舎は階段が多い構造で、弐年生の教室は最上階・8階にあるようだ。

息も絶え絶えになりながら教室の扉を開ける。

すると、教室の空気が固まった。

黒板の前に立っている大人がチョークを持った手を止める。

先生かな。

そんな事をぼんやりと考えていた。

先生のような人が口を開く。

「あぁ、えーっと…亜輝(あかぐ)さん、ですか。来たんですね。」

亜輝というのは私の名字だ。

生徒にそんな反応はひどいんじゃないかという言葉を飲み込む。

「はい、今来ました。」

「そうですか、じゃ、席についてください。」

本当に、素っ気ない。

無難な対応、といえば聞こえがいいのだろうか。

いや、れっきとした職務放棄である。

それを置いても、私の席はどこだろうか。

見たところ、空席は見つからない。

「すいません。私の席、どこでしたっけ?」

気まずい空気が流れる。

教師の方をちらっと見る。

教師は目をそらしながら言う。

「僕は知りません。クラスの方に聞いては?」

完全にしらばっくれである。

「はぁ。そうですか。」

クラス全体に聞こえるほど大きなため息を付く。

どうしようかと全体を見回した時。

「み、実稲(みいね)!!」

騒がしく1人の美少女が駆け寄ってきた。

その少女は弾けるような笑顔で私に突進してきた。

そして、その突進は私の想定を優に超えて強力だった。

この美少女は誰なのか。

なぜ私の机と椅子がないのか。

どうしてこんなにも危険人物認定されているのか。

私の悩みは少女の突進とともにふっとばされた。