しょうがないので、すべてのアプリを立ち上げてみる。

有力な証拠らしきものがあったのは電話アプリとメモ帳アプリだけ。

電話アプリには、3つだけ連絡先が登録されていた。

本部、夕霧寮(ゆうぎりりょう)、あと「水雫(みしず)」さん。

最初の2つはともかく、水雫さんは重要人物だろう。

そんな事を考えながら、次はメモ帳をもう一度開く。

メモ帳には、呪文らしきものが大量に載っていた。

『立ち()める暗雲ー禍々しき(もや)(ケガレ)の棲家ー聖なる後光(ごこう)の力を()ってー清め(たま)えー(はら)い給えー全ての穢を討ち滅ぼし給えーー急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)ーー陰陽道(おんみょうどう)荒魔斬(こうまざん)霞一閃(かすみいっせん)

とか

『満ち満ちる悪意ー淀んだ空気ー穢れた氣力(きりょく)ー聖なる後光の力を以ってー清め給えー祓い給えーすべての穢れを討ち滅ぼし給えーー急急如律令ーー陰陽道ー氣呪弾(きしゅだん)浄化功(じょうかこう)

とか。

昔の私には申し訳ないけど、第一印象は”私って…中二病でした?”。

どうしたものかと考えていると、目に携帯のホーム画面が映る。

そして、はたと気づく。

今日は平日だ。

「が、学校!行かなきゃ!」

急いでクローゼットに向かうと、可愛いキャラメル色のブレザーがハンガーにかかっていた。

隣にはスカートとスクールバックもかかっている。

スカートはシックな赤のチェックで、リボンはスカートと同じ柄だ。

スクールバッグには筆箱と鍵、教科書が何冊か入っている。

冷蔵庫を開く。

ほとんど何もない

魚肉ソーセージを(かじ)って、携帯電話をバッグに入れるととりあえず家を出る。

制服のポケットには学生証が入っていた。

急いで中を見る。

そこには全てを諦めたような真っ暗な瞳をした少女がいた。

「この子…もしかして私?」

そこで、私は私の名前を知った。

私の名前は亜輝(あかぐ)実稲(みいね)

国立陰陽師(おんみょうじ)学校夕霧寮所属。

始めまして、私。