今日は、新しいことを学んだ。

テンションが上りすぎると、人類は固まるらしい。

そのまま何も出来ずに呆然と固まっていると、海漣を一瞥した少女はこちらへと歩み寄ってきた。

そして、再びとてもとても綺麗なお辞儀を披露する。

背中が真っすぐで、腰などは90℃に曲がっているのではないだろうか。

そして、そのまま凛としたよく通る声でスラスラと流れるように挨拶をする。

「お初にお目にかかります。我らが主人、亜輝(あかぐ)実稲(みいね)様。(わたくし)亜城(あしろ)家次期当主。言編姫(ことあみひめ)の名を拝命致しました、亜城弥編(みあみ)で御座います。」

「もう!おっそいよー!!」

笑いながら、怒ったように海漣が弥編のもとへと駆け寄る。

いつの間にか現れていた狐の尻尾ーーしかも9本もあるーーに顔を埋めて戯れている。

遊ばれている、と言ったほうが正しいだろうか。

「ずいぶんと、仲が良いようですが…?」

そう聞くと、弥編が口を開いた。

「まぁ、御存知なかったのですか。私としたことが。申し訳ありません。海漣と私は、同い年なのです。」

「えっと…私とは同い年じゃないんですか?」

「ええ。私共は飛び級で入学したもので。」

「え?飛び級!?凄いですね…。」

「いえいえ。実稲様こそ、この学校の開校当初は飛び級入学者筆頭候補として目されておりましたのに。私共と同学年で入学されたときには腰を抜かしそうになりましたわ。」

「そうそう!最高学年だと思ってたのにさー。ガチでビクッたよー!!」

海漣の語彙力がガクッと下がる。

今まで話に参加できず、寂しかったのだろうか。

狐の尻尾から私へと抱きつき対象を変化させてきた。

「海漣。少しばかりやり過ぎでは?それ以上行くと、あなたの家族ごと消されてもおかしくはありませんよ。」

「怖いこと言わないでよー!!でも、この前もそれで誰か退学になってたもんね。」

弥編が海漣をたしなめる。

…何か不穏な会話が聞こえたのは気のせいだろう。

気のせい、気のせい…。

なにはともあれ、随分と頼もしい助っ人が来てくれた。

1週間後の不安をかき消すように、私は笑って2人に駆け寄った。