私は、何をしているんだろう。

突如として、現実世界に引き戻される。

窓の外から柔らかく差し込む朝日が眩しい。

心地よいはずの鳥の鳴き声が(うるさ)い。

脚に当たるシーツの感触が気持ち悪い。

身体が熱い。

息遣いが荒い。

夢を、見ていた。

ぽろりと、涙がこぼれる。

きらきらと日光(ひかり)を受けて輝くそれは、シーツの上にシミを残す。

次々とシミが増えていく。

嗚咽がこみ上げる。

ベッドから動くことができず、布団の上に丸まりながら(むせ)び泣く。

何で、私は泣いているの?

分からない、何もかもが、分からない。

ただ、ひたすらに、苦しくて、悲しくて、虚しくて。

空っぽの心の中に、そんな感情だけが渦巻いている。

心の中を覗いても、私のどこを除いても、その3つ以外の感情は見つからない。

そこで、気付いた。

気付いてしまった。

口からこぼれ出る。

「私は…誰?」

声に出すと、より一層恐怖が育つ。

分からない、何もかもが、分からない。

私は、全てを忘れてしまった。

嬉しいことも、悲しいことも、苦しいことも、楽しいことも。

何もかも、全部。