人気のない階段の踊り場。

すべてを語り終え、海漣(みらん)はふぅ、とため息を付いた。

「これが、私の知っている全て。実稲(みいね)が唯一心を許していたーー許しているように見えたのが、水雫(みしず)ちゃんだったの。」

「だから、連絡先が…。」

星夜(ほしや)水雫。

途轍(とてつ)もない力を持ちつつも、人類を切り捨てた少女。

「許せない…。」

思わず呟いていた。

その瞬間、大地が揺れ動いた。

血が沸騰するように熱い。

私の髪は宙に浮かび、学校中電気が消えた。

その中で私だけが立ち、紅い瞳を輝かしている。

何が起きているのだろう。

私の意志ではない。

自分の意志だ。

記憶を失う前の、私の意志だ。

強い、強い、怒り。

(ケガレ)への、恨み。

2つの感情が私から飛び出し、世界を壊していく。

「実稲…もう、やめて?」

海漣がそう言って立ち上がり、私の方に手を置く。

泣きそうな顔をしている。

胸が痛む。

海漣が何かをつぶやく。

身体から力が抜けていくのを感じた。

何をしたの?

そう言おうとした途端、意識が遠ざかった。

目の前が真っ白に染まる。

あのときと同じだ。

なぜかそう思った。

必死に手を動かす。

海漣には、当たらなかった。

私の必死の抵抗は、しゃぼん玉のように膨らんで。

ぱちん、と弾けて、消えた。