そう、頭では分かっているのに............



「〜〜っ、私、
樋口さんじゃなきゃ、だめです、」



断られること承知で言葉を発すると。



「──────せいこう、」



私に聞こえないぐらいの声量で、
〝何か〟を発すると樋口さんは。



「俺、夜、ネクタイ外したら、
呼吸ラクになるから、来てよ部長室」



そのまま言葉を繋げて話すと。



「俺は、いつまでも味方だから、
ゆっくりでいいから、おいでね。
じゃ、宮脇さんはここ泊まっていいから」



私が割って話す隙も、
引き止める隙も与えず、話してそのまま部屋を出てしまった。



その樋口さんなりの、
暖かい優しさが、ギュッと胸に染みて。



樋口さんのことが、
──────もっと好きになった一夜だった。





fin.